2013.10/07 高分子の難燃化技術とノウハウ(5)
溶融しやすい樹脂を炭化促進型で難燃化するには、燃焼時に溶融物の粘度を高くなるような組成にすれば良い、そしてリン系の難燃剤を用いるときにはオルソリン酸として燃焼時に系外へ揮発しないように難燃剤の分子設計を行う必要がある、ということがホスファゼン変性ウレタンフォームの開発経験で得られたノウハウである。
しかし,これは難燃試験を行いながら観察して得た仮説に近く科学における定理ではない。但しリン系の難燃剤が燃焼時にオルソリン酸として揮発している現象について当時の科学論文に書かれていた。また、熱重量分析を行い、その重量減少カーブの解析や分析後の残渣を組成分析したところ、ホスファゼン変性ウレタンフォームにおいてほぼ添加した量に相当するリン成分が含まれていたが、市販の5種類のリン酸エステル系難燃剤では600℃における残渣にリン成分がまったく観察されなかった。
難燃剤の分子設計に関して科学的検証に耐えうる情報は得られたが、燃焼時の溶融物の粘度については溶融物中でホスファゼン誘導体がどのように振る舞っているのか不明のため検証が困難であった。例えば単純に軟質ポリウレタンフォームのポリエーテルポリオールとホスファゼン誘導体を混合してみても混ざらない。
ただ、系外にオルソリン酸としてリンの成分が揮発しない場合にはリンの難燃化成分で高粘度化できてドリップを防げるのではないか、と予想された。そこで一般のリン酸エステル系難燃剤を用いる時に、燃焼時の熱で無機高分子を生成する可能性のあるホウ酸エステルを組み合わせて難燃化する手法を試してみることにした。
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