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2013.10/13 機密情報

第54回電池討論会JFEテクノリサーチの発表について、別の側面からも感心した。それは機密情報に対する姿勢である。発表内容は、電極反応に関わる情報でその情報を得るための技術は高くどこの企業でも簡単に得られる情報ではない。このような情報についてともすれば機密情報として学会報告を認めない会社もある。

 

まず機密情報については、情報セキュリティーISO27001に基づくが、品質マネジメントISO9001に準拠して考えると、各企業の判断に任されていることになる。また、その判断の結果を文書として残し管理している情報がその企業の機密情報である。

 

研究開発の情報を外部発表する場合には、外部発表の許可願を提出することになるが、その時の判断で研究開発成果がその企業にとって機密かどうかが決まり、何を機密としているかにより企業の判断能力の高低を知ることができる。すなわち何でも機密扱いにする企業は判断能力が低く、機密を管理していないのと同じ状況になる。なぜならそのような管理方法では企業活動でどんどん機密が増加しやがてコストの増大を招き管理できなくなるからである。ゆえにISO9001の文書管理が重要になってくる。

 

それでは技術情報の場合にどのような判断で機密扱いにするのか。それは機密にしなければ守れない技術についてである。例えば技術開発の成果の多くは特許によりその権利は守られるが、特許にできないノウハウは機密扱いにしなければ守ることができない。ゆえにそのようなノウハウは機密情報として機密文書に残し、しっかりと管理しなければならない。そしてこの管理されている情報がその企業の機密情報となる。

 

ちなみに公開された特許情報の技術は機密扱いにしない企業がほとんどである。但し、公開された特許情報の重要度や他社特許との関係性については機密扱いになる場合がある。すなわち情報の組み合わせについてその考え方が企業活動に大きな影響を与える場合には機密扱いにしなければならない。そしてこの結果は機密文書として残すことになり、機密文書として管理されている間は機密情報である。

 

ところで科学的成果は機密扱いにすべきかどうか。純粋な科学的成果は、いずれどこかの機関から公開される運命にあるので機密扱いにしない企業は多いが、ここで企業の技術力が試されることになる。すなわち科学と技術を正しく理解し、公開の判断を下せるかどうかは技術力に依存する。

 

JFEテクノリサーチの発表はこの観点で見事であった。純粋に科学的成果に絞って発表されており、そのメカニズム仮説については現在検討中としたのだ。昨日も触れたが、発表された成果から仮説を立てることは容易な状況である。しかしもし発表内容がどこかの企業の情報を参考にしていたときにメカニズムの仮説が機密情報に触れる場合がある。このような微妙な場合には、純粋な科学的成果だけに絞って情報公開するほうが無難である。その判断のメリハリが発表内容から伺われた。

 

科学情報や技術情報をどこまで機密扱いにするのかは、技術に関する判断になるのでその企業の技術力を知る尺度になる。また企業活動から得られた科学情報や技術情報の積極的な公開はその企業の技術力のPRになる。この時の判断において科学と技術を正しく理解しているかどうかが重要である。機密情報は文書管理で決まるが、その基準を決めるためにも科学と技術の目的を正しく理解する必要がある。

 

カテゴリー : 一般 学会講習会情報

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