2013.10/17 混練のノウハウ(4)
加硫ゴムの混練について加硫直前の混練物をプロ練り、プロ練り以前の混練物をノンプロ練りと呼ぶ場合がある。バンバリーの混練物を必ずロール混練するので、バンバリープロセスはいつでもノンプロ練りである。またロール混練については、ロール混練を何回行うかにより、プロ練りとノンプロ練りに分かれる。最後のプロセスで行われるロール混練はプロ練りとなるが、その直前のロール混練はノンプロ練りとなる。
このように加硫ゴムでは最低2回以上混練プロセスで処理される。また混練プロセスの時間について、最低でも15分以上だ。長いときにはトータルの混練時間が30分以上になるときもある。これに対して樹脂や熱可塑性エラストマー(TPE)の混練時間は二軸混練機の投入口から吐出口までの時間できまり、せいぜい10分前後ぐらいである。
加硫ゴムの価格がTPEよりも高くなるケースがあるのは、加硫プロセスも含めこのようなプロセスコストがかかっているからである。しかし加硫ゴムの性能はTPEよりも高いので、高性能なゴム材料は今でも加硫ゴムが使用されている。
加硫ゴムの混練時間が長くなるのは配合処方が複雑である点も影響している。一般に2種類以上の加硫剤はプロ練りとノンプロ練りに分けて配合される。混練時の熱で加硫が進むのを抑制するためである。高分子材料全てについて調査したわけではないが、ゴムを樹脂やTPEの配合処方と比較すると、ゴムにはおおよそ2倍前後の配合剤の種類が使用されているのではないだろうか。
混練は多数の配合剤を高分子に分散するために行われるが、混練で高分子の変性が行われていることをゴム材料開発者は認識している。しかし樹脂材料開発者は、そのあたりに関して無頓着である。有名な樹脂会社の優秀な技術者に質問してみてもそのような認識が無い。
混練時間で高分子がどのような影響を受けるのか、樹脂メーカーの技術者に理解してもらうために、実験用小型バンバリーで混練時間を変えて混練し、ガラス転移点のエンタルピーの変化を調べてグラフを作成した。このエンタルピーは高分子の自由体積部分の量と関係している。
その結果、30分以上混練しなければこのエンタルピーは安定しないことが分かった。また、混練時間だけでなく、混練温度もこのエンタルピーに関係し、溶融粘度(MFR)も複雑な変化をしている。樹脂の溶融粘度は、ロット間でばらつく因子で、この値を樹脂のスペックに入れる場合があるが、ばらつく理由もこのようなデータを整理したグラフで眺めると見えてくる。
樹脂の混練時間に比較し、加硫ゴムの混練時間は一般に長いが、それは高性能な加硫ゴムの品質を安定化するために重要であり、それを短くする研究開発も行われているが、いまだに加硫ゴムは効率の悪いバンバリーとロールで混練されている。高性能なゴムのためには重要なプロセスだからである。
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