2013.10/22 ビッグデータ時代(2)
今のパソコンは、30年前の大型コンピューターを凌ぐ性能を誇り、メモリーも安くなった。すなわちソフトウェアーさえあれば家庭で気楽にビッグデータを扱える時代である。
しかし、多変量解析などの統計処理では、コンピューターでデータ処理を行うとその結果を手軽に得ることができるが、その結果が正しいのか、あるいはそもそも処理の仕方が正しいのか、統計処理の知識が無ければその判断すらできない。
統計学については、中学と高校で簡単に学習しその基礎が身についているはずであるが、大学入試で重視されてこなかったので社会人になって改めて統計学を学ぶことになる。技術開発を担当すれば、タグチメソッドとして出会うことになる。
「タグチメソッドは統計ではない」、というのは故田口先生の口癖で、タグチメソッドの真の狙いが技術開発思想にあり、実験計画法でSN比を計算したりするのはその目的ではない、というのがその理由であるが、SN比の計算方法は統計学の流れを組んでいる。そしてタグチメソッドにはマハラビノスタグチメソッドという多変量解析の手法もある。
タグチメソッドは統計ではないが、タグチメソッドに用いられている計算を正しく早く理解したいと思うならば統計学の基礎を勉強すべきである。このようなことを書くと故田口先生に叱られそうだが、統計学の基礎を理解しておれば、タグチメソッドが統計ではなく品質工学である、という理解も早くできる。
これが30年前ならば、日科技連のQC手法で技術系新入社員の必須科目として統計手法の基礎を学んだ。工程管理にも統計手法は重要で、これを理解していなければ現場の管理職として失格であった。この時代は科学と技術をあたかも味噌糞ごとき扱いをしていた頃である。
ところが今はコンピューターに数字を入れれば結果がすぐに出てくる時代であえて統計学の基礎を学ばなくても工場で仕事ができるようになった。タグチメソッドは統計ではない、とそのインストラクターも言うのでますます統計学を勉強しなくなった。
そこへ昨今のビッグデータブームである。改めて統計学が注目されているが、少なくとも技術屋は多変量解析まで一通り知っていた方が便利である。30年前は新QC7つ道具の一つとして多変量解析を学んだが、今はマハラビノスタグチメソッドとして学び、統計科学としての側面が見えなくなってきている。統計学は科学の一分野であり、技術の一つの手法であるタグチメソッドのカテゴリーではありません。
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