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2013.11/09 樹脂補強ゴム(3)

入社して初めての忘年会は憂鬱で暗かった。テーマが無くなったので他部署へ異動することになったのだ。忘年会は送別会も兼ねていた。テーマを早く進めることができたので褒められるのかと思ったら意外な展開が待っていた。厳しい会社である。それでも上司が間違えてプレゼンテーションしたおかげで成果がでたわけだから査定が良くなるのかと期待したら、入社2年間の業績では査定がつかない、と告げられ落胆した。ボーナスは新入社員お決まりの金額であった。

 

ただ、10月11月のがむしゃらな仕事の進め方で、多くの方の指導を受けることができ、密度の高い2ケ月間だった。また12月は指導社員が仕事をまとめてくれたので、1ケ月樹脂補強ゴムについてゆっくり勉強することができた。

 

樹脂補強ゴムはバンバリーとロールで混練していたが、当時熱可塑性エラストマーの新素材開発が盛んで、二軸混練機でゴムを混練する新技術が注目されていた。熱可塑性エラストマー(TPE)は1933年にグッドリッチにおいて軟質PVCで実現された歴史の古い技術であったが、性能が中途半端なため1960年頃までゴム屋はあまり注目しなかった。PU系のTPEの成功でTPEの学問的研究が盛んになるとともに市場も加硫ゴム分野に拡大してきた。1970年代には、ポリウレタンRIMを用いたウレタンタイヤが世界中で研究されたが、そのアイデアは実用化困難な技術であると、分かった時代である(注)。

 

1980年前後には二軸混練機の中でゴムの架橋を進める動的架橋技術の研究が始まり、技術と市場が大きく拡大することになる。すなわち、樹脂補強ゴムというのはゴム屋が考えた材料の呼び名で樹脂屋が考えたのがTPEである。また、二軸混練機を用いると生産性が著しく上がるので、動的架橋技術も含め、材料開発は二軸混練機中心に進むことになる。そして樹脂とゴムのあいの子の材料はTPEとして呼ばれるようになってゆく。

 

今でもTPE関係の特許出願は盛んで、特許の中心は二軸混練機の中で行うゴムの加硫方法である。ただ面白いのは最近プロセスの改良を進める特許出願も行われてきており、混練技術に対する関心も高くなってきているように思われる。もし現在の混練技術にご不満あるいはご興味のある方は弊社にご連絡ください。

 

(注)乗用車用タイヤは絶対にポリウレタンRIMで実用化できない、という結論を出すところまで徹底的にタイヤ会社は研究し尽くした。すなわちポリウレタンRIMは事業の根幹を揺るがす破壊的技術だったからである。その成果で遊園地のカートなどの遊具のタイヤはポリウレタンRIMで作られるようになりコストダウンが進んだ。しかし、公道を走る車のタイヤは未だに加硫ゴムである。ゴムという材料はプロセスが異なると性能が大きく変わるのである。樹脂の混練プロセスは、未だゴムの混練プロセス及びその哲学に追いついていない。

 

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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