2013.11/12 熱可塑性エラストマー(TPE)
TPEとは、加熱すれば流動して通常の熱可塑性プラスチックと同様の成形加工ができ、常温ではゴム弾性を示す材料である。ちょうどゴムと樹脂の両者の性質を持った材料である。通常の加硫ゴム成形体がバンバリーとロールで混練され成形工程で加硫に長時間かかるプロセシングの問題を一気に解決した。
しかし、動的に使用される部分には加硫ゴムほどの信頼性に乏しく、全ての用途を置き換えるまでに至ってない。この状況はおそらく将来もかわらないであろう。なぜならTPEの加硫ゴムと異なる特徴が熱可塑性であり、また分子間で自己補強性を持っている点である。特に前者の特徴から高温クリープという点で加硫ゴムと同等の性質にならないことが予想される。
TPEの分類方法は教科書により様々であるが、架橋型と非架橋型の分類が理解しやすい。この分類は、高温では流動するが常温では塑性変形を阻止するTPEの仕掛け、すなわち拘束成分に着目している。架橋型には、拘束形式が動的加硫を行うタイプとイオンクラスターによる場合がある。非架橋型には、凍結相や水素結合、結晶相という拘束形式がある。
TPEが登場してすでに70年以上が経過したが、未だに特許出願が多数行われている発展途上の材料である。特に1980年前後に登場した動的加硫技術によるTPEに関する特許が多い。タイヤをはじめ厳しい条件下で使用される歴史のある加硫ゴムに比較し、機械物性が圧倒的に低いからである。
TPEと古典的加硫ゴムとの機械物性の差はプロセシングの改良を行わない限り埋まらないのではないかと考えている。それは30年前に樹脂補強ゴムを開発した経験から、古典的加硫ゴムにおけるプロセシングの効果が身にしみついているからかもしれないが、加硫剤の分散一つ取り上げても二軸混練機で容易にロール混練並の分散を実現できると思えないからだ。もしこの点に疑問を持たれた方はご質問ください。
カテゴリー : 高分子
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