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2013.11/30 混練機構(1)

樹脂が溶融したときに力が加わると大きく変形する。その時の変形による歪み速度は、応力F/溶融状態におけるその時の粘度ηである。また変形の仕方は、剪断変形と伸長変形の2つの組み合わせで表現できる。

 

すでに過去の活動報告で説明しているように剪断変形は、流動方向と粘性抵抗により発生する力の方向を含む面に垂直な法線方向に作用する力は働かないが、伸長流動では、ちょうど餅をひっぱったような状態をイメージして頂けば分かるが、xyz3方向の力を考えなければならない。ゆえに直感で伸長粘度は剪断粘度の3倍になることがイメージできるがこれがTrouton則である。

 

ここまでの話を混練の教科書では数ページにわたり線形代数を用いて詳しく説明している。混練機の中における高分子の流動は教科書に書かれているような単純な状態ではない。しかし、モデル的に剪断流動と伸張流動の2つの組み合わせで混練が進む様式を表現できることはオープンロールでゴムを混練していて理解できた。

 

また、伸長粘度が剪断粘度よりも高いことは、バンバリーを用いること無くオープンロールで最初のプロセスからカーボンをゴムに分散するときに、剪断流動が頻繁に観察されることで容易に想像がつく。換言すれば、カーボンをとにかく分散したいときには、剪断流動を積極的に活用した方が効率良く進むということだ。

 

ゴムへカーボンを分散するときのように2種以上の成分を混合する場合の混合様式には分配混合と分散混合というものがあるが、これは明日説明する。その前に、難しいレオロジーによる理解よりも実際にオープンロールで混練を行い、分散が進む様子を眺め直感を鍛えることがいかに大切かを理解して頂きたい。

 

ゴム会社の新入社員時代に1週間ほど試行錯誤でゴムの混練をオープンロールで行い、悪戦苦闘していたときに、周囲は指導社員による「いじめ」といっていたが、ゴムの混練を理解する為に自分で観察工夫することの重要性を教えてくれた指導社員に今でも感謝している。

 

指導社員は、当時先端のレオロジーを研究していた京都大学大学院卒の物理屋で大変優秀な人であった。おそらく学問を理解しているゆえにゴムをレオロジーで記述することの難しさも良く理解しており、体で物性を理解することの重要性をご存じだったのだろう。

 

第三者から見るといじめに見えていたようだが、技術の伝承方法として優れていた。たった3ケ月間指導を受けただけだが、濃厚な日々で学生時代形式微分程度の理解であった常微分方程式も解けるようになった。マンツーマンの厳しい指導の成果である。しかし当時学んだダッシュポットとバネの高分子モデルは指導社員が言っていたように学問として時代遅れになっていた。

 

カテゴリー : 一般 高分子

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