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2013.12/01 混練機構(2)

溶融した樹脂が混練で変形する時の変形の仕方、すなわち流動状態及びその時に樹脂に働く力は、剪断流動と伸張流動の2つの組み合わせで表現できるが、その結果混練機の中で2種以上の成分の混合が進行するモデルは、分配混合と分散混合の2種に分けて考えられている。これは最近の研究成果で30年以上前にはなかった考え方である。

 

分配混合は系全体にわたる各成分の均一化に相当するモデルであり、分散混合は、分散相の微細化に相当するモデルである。分配混合では、歪みの作用による各成分の引伸ばし、重ね合わせによる相対的な位置交換が重要となる。このため、各成分が濡れることができるかどうかが問題となり、その結果形成された界面へ作用する歪みの大きさとその方向が混合を進める支配因子となる。

 

昨日変形による歪み速度は、応力F/溶融状態におけるその時の粘度ηで表現されると書いたが、この関係から分かるように、樹脂の粘度で歪み速度が影響をうける。すなわち混合が進行しているときの樹脂の粘度で分配混合が影響を受けることになる。

 

このモデルで問題となるのは、樹脂の動的粘度は温度と周波数に依存して変化しているが、シミュレーションの時には適当な粘度を放り込んで計算していることである。なかなかシミュレーションと実際の樹脂の混合の様子が一致しないのは動的粘度の扱いが難しいことも影響している。混練の経験の無い人はここで勘違いをすることが多い。あるいは、このような考え方なので新しいアイデアを出せないあるいは目の前の問題解決で間違った対策をすることになる。

 

また、分散混合のモデルでは分散相の分裂と微細化の考え方が重要で、応力の作用が支配因子となる書き方が一般の教科書で書かれている。しかし、混練機の中では、壁面への衝突や熱輻射が働いており、単純に混練機のローターで働く剪断力だけでは応力の作用をモデル化できない。さらに無機のフィラーの混合では壁面で発生する摩耗の効果を考えなければならない。粘度や流動状態の影響があるのは分配混合と同じであるが、微細化過程の考え方は、多数の因子が働くので論文に書かれているような単純なモデルでは説明が難しいと思っている。

 

長い間、剪断流動により微細化は難しい、と言われてきた。10年ほど前の国研、高分子精密制御プロジェクトではナノテクノ本命技術を目指し、L/Dがとてつもなく大きい二軸混練機を製作し、伸張流動を中心にした混練が検討された。またウトラッキーにより発明された伸張流動装置も同時に検討された。それなりの成果が出て、ナノオーダーへの分散が機械装置でできることが示されたが、一方で産総研の研究結果では高速剪断流動でもナノオーダーの分散が進むことも発見された。

 

 

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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