2013.12/07 未完成な混練技術
30年以上前にゴムの混練技術を習得し、8年程前にラインから外されたおかげで樹脂の混練を研究できる機会を得た。ポリエチレンとパルプとの複合材料やレンズ用ポリオレフィン樹脂の混練、PPSとナイロンを相溶させる新技術の開発、この技術を用いた射出成形可能な再生PET樹脂の開発、他社のポリマーアロイで発生したクレーム対応および供給元変更に伴う現場指導などじっくりと混練技術の研究をしたかったが、PPS樹脂の混練を担当して以来研究時間は無くなった。
ラインへ戻され電子写真用キーパーツ開発や外装材開発を担当することになった。落ち込まなくて良かった、と思ったのもつかの間、落ち込みたくなる状況の連続だった。外部の樹脂メーカーの混練技術の未熟さに何度も泣かされたのだ。
例えば前任者から引き継いだPPS系の材料を扱った開発では外部からコンパウンドを調達する企画で業務が進められていた。満足な成形体ができないのでコンパウンドメーカーの技術者を呼び説明を聞いたところ、コンパウンドメーカーがコンパウンドの問題ではなく押出成形技術の問題、などと言うので議論が進まない。その結果、コンパウンドを内製化することになり、短期間にプラント建設しなければならない悲劇となった。
幸い混練プラントの技術を持った中小企業を知っていたので窮地を脱したが、常識はずれの開発で体重が5kg減少した。単身赴任で不規則な食生活となり5kg体重が増えたが、東京に戻る頃にはこの開発のおかげで元の体重になっていた。
ゴムの混練と樹脂の混練の両者を経験しわかったことは、ゴム屋と樹脂屋で混練に対する哲学が異なる点だ。PPS系の材料開発ではコンパウンドメーカーの技術サービスから素人には分からない世界です、と言われたが、確かに素人には理解できない対応を技術サービスはしていた。
当方が成功に至るアドバイスをしているのにそれを素人発言として却下してきたからだ。ゴムを混練してきた経験からとてもゴールにたどり着けない、と思いアドバイスしたのだが、聞き入れてもらえなかったので自分でコンパウンドを生産することにしたのである。
連続式混練機を中心にした樹脂の混練技術は、ポリエチレンやポリプロピレンに色材を分散している程度ならば十分な技術であるが、パーコレーション転移を制御して半導体樹脂を製造しようという高度な材料設計には対応出来ていない未完成の技術である。退職後改めて昔の混練技術も含め見直しているが、樹脂の混練技術には生産システムも含めイノベーションが必要である。
例えば、成形工程で発生しているテープ剥離のような品質問題は混練技術で解決した。これは長らく成形工程の問題とされていたのだが、コンパウンドメーカーが指導を依頼されたのでそれに応えたところ問題解決した。このような成形技術の問題に押しつけずコンパウンドの問題として受け止め誠実に混練の技術革新に励んでいるコンパウンドメーカーもある。
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