2013.12/22 和食のミステリー
先週NHKスペシャル「和食 千年の味のミステリー」が放送された。その後番組で紹介された内容を少し調べてみたが、WEB上には番組以上の内容が無かった。おそらく緻密な情報調査の結果の番組なのだろう。番組を見ていて疑問点が幾つかあり、そのままここで述べるのは気が引けるが、情報提供のつもりで書きました。もしご興味を持たれた方はNHKオンデマンドなどでNHKスペシャルを見てください。
番組では、日本の調味料醤油やミソ、みりんなどの発酵食品が、日本人の発明による「アスペルギルス・オリゼ」(日本コウジカビ/A.オリゼ)というカビから作られている、そしてA.オリゼを初めて抽出する方法を見つけたのが日本人だ、と紹介されていた。
驚くべきことに鎌倉時代には、種麹屋という世界最初のバイオビジネスがスタートしていたのである。この種麹屋のおかげで日本中にA.オリゼが広まった、と説明があった。この種麹屋についてもWEB上には詳しい説明が無かったので、時間を見つけて調査したいと思っている。
松たか子さんがナビゲーターになり四季折々の京都の風景を絡めながら、万人向けのナビゲーター共々美しい日本の美を表現しており、科学作品と言うよりも芸術作品と言っても良い番組だったが、NHKには科学に絞ったA.オリゼの番組を作ってもらいたいと思った。科学的にも価値のある内容がさらっと美しく表現され、科学番組としてみていた当方には少し物足りない後味であった。
さてA.オリゼに関する科学番組をNHKが作ってくれることを期待しつつ、感想を述べさせて頂くが、昔のA.オリゼは細胞の核が一つであったが今のA.オリゼにはその核が複数含まれている、とか、DNAの解読を行ったところ、昔のA.オリゼには毒素を作るアミノ酸配列があったのがすっぽりその配列が現代使用されているA.オリゼから抜けている、という説明についてはもう少し詳しい解説が欲しかった。一番大切なところである。
細胞核がどのように多核化していったのか、あるいはDNAのアミノ酸配列の一部分がどうしてすっぽり抜けたのか、またそれを作るにはどのような操作が必要なのか一切説明が無く、科学番組として期待していた当方は、松たか子さんの美しい着物姿にも物足りず不満が残った。ここが一番知りたかったところである。推理探偵小説で、探偵が行方不明になり犯人らしき人物も多数出てきて誰が誰だか分からなくなる、というような欲求不満の残った番組だった。
ただ、科学の無い時代にバイオケミストが日本に存在しA.オリゼを技術で作り出したことは確かである。種麹屋が登場した鎌倉時代(1192年鎌倉幕府誕生)には、古典力学の創始者ニュートンすら生まれていない。科学が存在しなくともバイオケミストリーのような高度の技術を生み出すことができるのだ。
昨年iPS細胞の技術は非科学的に生まれた、と紹介したが、A.オリゼは正真正銘非科学的に生まれた技術である。このようなすばらしい技術成果をみると、科学の役割について技術と科学を車の両輪にたとえたりするのさえ不適切な捉え方のように思えてくる。科学は技術開発のスピードを早めるのには役だったが、果たしてイノベーションを生み出すのにどれだけ役だったのだろうか。イノベーションは科学以外の力が重要に思うようになった。
カテゴリー : 一般
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