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2013.12/23 技術と科学

醤油や味噌、みりんなどの発酵食品に使われる米麹は日本人の発明で種麹屋というバイオビジネスが科学の無かった鎌倉時代に存在したという。しかも米麹の遺伝子や核が複数あるという細胞核の状態は自然界の麹菌と全く異なるという。そもそも生物の細胞には細胞核は一つ、というのが学校で習う科学的知識である。

 

米麹は明らかに技術の産物である。しかも現代の分析機器など無かった時代の技術で「カン(K)」と「経験(K)」と死ぬかもしれないリスクを省みず実験を遂行した「度胸(D)」の成果に思われる。現代でもKKDが細々と伝承されているが、科学の重要性の前にあまり歓迎されていない。しかし、昨年KKDで日本人のノーベル賞が生まれてもイノベーションの動力となる可能性を持った方法に対してあまり議論が活発になっていない。

 

科学を利用したKKDの威力は昨年のiPS細胞発見の経緯からNHKの番組を見た人は実感したはずだ。詳細はこの欄で触れたのでそこを読んで頂きたいが、ヤマナカファクター以外にも細胞をリセットする遺伝子の組はまだ存在する可能性が「科学的に」残っている。それはヤマナカファクターが、経験から見いだされた24組の遺伝子から度胸で全てを放り込んだ実験で経験的消去法を用いて見つけられた遺伝子の組であり、その遺伝子の組が唯一の組である、という科学的証明が成されていないためである。

 

ノーベル賞受賞という成果でもKKDが重要な役割をしている。もし、純粋に科学的に攻めていたら偶然が無い限りヤマナカファクターは見いだされなかった。白川博士の導電性高分子では学生の実験失敗という偶然がポリアセチレンを生み出したが、ヤマナカファクターは意欲のある学生が「試しに之もやっておこう」というKDの賜物である。そして良い結果が得られた後、試験で愛用していたかもしれない消去法というもう一つのKでヤマナカファクターを決定している。

 

おそらく米麹も同様のKKDで発明され、代々その技術が家宝として伝承され種麹屋が生まれたのだろう。科学が全くない時代なのでその進歩は大変ゆっくりではある。また、家宝は独占され今日まで伝承されてきたと思われる。現在はバイオビジネス花盛りの時代で農学部は花形学部である。その昔工学部受験者の滑り止めになっていた時代がある、とは信じがたい状態で、逆に工学部が落ち込んでいる。

 

本来技術も教えるべき工学部であるが、日本のアカデミアの発展の歴史から科学的知識しか教えていない。かつて客員教授時代に講義で科学を取り入れたKKDの話をしたら日本人の学生は居眠りをし、目を輝かせて聞いてくれたのは中国人始めアジアからの留学生であった。日本では科学を道具として活用するKKDは敬遠されるのか?

 

カテゴリー : 一般

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