2013.12/27 ニコンDfの技術
フジフィルムのデジカメの成功で2年ほど前からクラシック感覚のデジカメが増えてきた。そして今年ニコンDfという画期的デジカメが発売された。どこが画期的かというと、画素数とか感度とかのスペックを宣伝しないカメラである。見て触って買ってください、といわんばかりのカメラ好きを狙った商品だ。
さっそく触ってみた。軽い!といってもペンタックス(リコー)の一眼レフカメラよりは重く感じた。実際にはペンタックスK3よりもわずかに軽いのだが、ペンタックスの製品はレンズも軽く作られているのにニコンのレンズは重い。ただ見た目の大きさから推定される重量よりも軽い。特にレンズセットで発売された組み合わせは、フィルムカメラを触っているような錯覚になる。ダイヤルの感触がまたよい。単なるぎざぎざダイヤルではなく昔懐かしい触り心地である。シャッターボタン始めボタン類の触り心地も抜群である。今バックオーダーを抱えているヒット商品だそうだ。
雑誌「アサヒカメラ12月号」に掲載された開発者インタビューを読み開発本部長山本氏の発言にしびれた。「構想段階ではしっかりと手を使って書き、イメージを膨らませるという教育をしている」と語っている。今時は3次元CADで図面を描けば、立体物の構想をPC上ででき、そのまま図面に落とせる便利な時代である。それでも構想段階では手を使うように教育をしているとのこと。
理由はCADで良いデザインができても実際に組み立ててみるとダイヤルの間隔が極端に狭かったりするそうだ。それで構想段階では手書きで、実際の自分のイメージを平面で確認しながら構想を具体化できるように教育をしている、という。これこそ心眼を大切にする技術者教育である。E.S.ファーガソンも同じような事を「技術者の心眼」に書いていた。
ニコンDfを1時間ほど店頭で触れてみたが、これだけ手になじむデジカメは初めてである。学生時代からペンタックスの手触り感が好きで、カメラはペンタックスを使い続けてきたが、このカメラには技術者の気合いを感じた。ただ、今売れに売れているので30万円近くする。センサー類はD4、その他はD610の部品の流用らしくD4よりは値段は安いが、外観にそれなりのお金がかかったカメラなのだろう。
高画素のデジカメD800よりも高い。D800と比較するのは無粋なことなのだろう。Dfは比較する対象が無い、それを欲しい人が買う商品である。そしてライカよりもお買い得である。カメラに興味が無い人もお金が余っていたらファッションアイテムとして買っても良いカメラである。価格もスペックとニコンカメラの製品ラインから考えるとビミョーに高い「持ちたくなる価値」を細部まで技術で表現した商品である。
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