2014.01/03 お餅
子供の頃年末になると大掃除を終えた翌週に餅つきを毎年行う習慣だったのが、小学6年の時に家を改築してから土間が無くなったのでその習慣が消えた。長年使われた石臼は庭で金魚鉢となった。餅つきを年末やらなくなったので米屋から餅を買うことになった。米屋の餅だからおいしいと期待したが家でついた餅よりもまずかった。
米屋には同級生の息子がいたので、餅がまずいとクレームをつけたら、機械で作っているので味が落ちる、我慢しろ、と正直に答えてきた。さらに餅には古米を使わず良心的に新米で作っているから、味は製造方法の違いだ、と言っていた。
実際に当時の名古屋市内の米屋で購入できる餅はどこも練り餅で、臼でついた餅ではなかった。近所の和菓子屋がわざわざ臼でついた餅を倍の値段で販売していた。臼でついた餅と練った餅でどうして味が違うのか不思議だった。
中学に進級したとき同級生が餅米を持ってきたらその餅米で餅を作ってくれる、というので味の違いを確認するために親に頼んで毎年親戚から送ってくる餅米を持って行き餅に加工してもらった。確かに練り餅はまずく、餅の味の違いは製造法の違いであることを確認できた。
当時の餅製造機はバンバリーのような装置でバッチ式であった。練り上がってできた餅は臼でついた餅と同じように見えるが、つきあがった餅を伸ばしてみると伸びが半分ほどしかない。臼でついた餅はよく伸びて、食べているときに困るぐらいであった。しかし練った餅は一応餅ではあるがあまり伸びない。また歯ごたえも微妙に違う。製造法の違いがレオロジーに現れたわけだが、子供の頃大変不思議な現象に思った。
今では同一型番の二軸混練機でも機械が異なると条件を揃えても混練物のレオロジーまで揃えることができず悩んでいる話を聞いたりしているので、臼でついた餅と練った餅で味が異なることなど当たり前に思うようになった。たまに商店街の行事で餅つきがあると正真正銘の臼でついた餅を味わう機会があるが、その味に感動しなくなったのは少し寂しい。
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