2014.01/06 環境に適合した難燃化技術
1990年代に高分子の難燃化技術はほぼ完成したように見えたが、環境対応技術の社会的ニーズの高まりと法規制などが進み、一部の難燃化技術が使えなくなった。困ったことにそれが最も難燃化効率が高い手法も含まれていた。すなわち一部の臭素系難燃剤と酸化アンチモンの組み合わせ技術だが、自主規制として脱臭素系あるいは脱ハロゲン系難燃剤開発の動きが出てきた。
ハロゲン系化合物と酸化アンチモンの組み合わせが低コストで高分子を難燃化できる優れた方法だが環境規制の前に敬遠される動きがある。この優れた難燃化システムに次ぐ方法は、リン酸エステル系難燃剤を用いる方法だが、いくつかの高分子では、10%以上難燃剤を添加しなければいけない場合もある。
難燃化の指標として窒素と酸素の混合気体の中でサンプルを燃焼させ、燃焼が継続しないときの酸素濃度を指数に用いる評価法がある。極限酸素指数法(LOI)と呼ばれる方法である。空気中で火が消える高分子材料にするためにはこのLOIが21以上にならなくてはいけないが、リンの含有率とLOIの相関関係が確認されており、そのLOI増加率が高分子の種類で異なることまで知られている。
リン酸エステル系化合物では分子の中のリンの含有率が低くなるので、リンそのものを用いる難燃剤も市販されている。すなわちマッチにも使われている赤燐をそのまま高分子に添加するのである。この手法は経済性も優れており普及しているが難点は樹脂の外観が悪くなる、あるいはその他の物性に影響が出る点である。例えばICパッケージに用いられ、赤燐粒子のつながりが原因で引き起こされたコンピューターの暴走事件が10数年前起きている。
リン酸エステル系難燃剤がまったく環境問題に無関係か、といえばそうではない。そのためリン系化合物を用いない難燃化技術の研究も行われており、いくつか特許出願されているが、いずれも高分子の種類が限定される方法である。この高分子の難燃化技術の分野は、地味ではあるが、科学的研究が遅れている分野で技術が先行している。
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