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2014.01/13 熱可塑性エラストマー(TPE)(4)

1933年グッドリッチによるTPEの発明から、1960年前後のTPUの衝撃そして1980年前後のTPVの開発まで材料開発の歴史を昨日簡単にまとめた。そして、TPVが樹脂補強ゴムに追いついていない原因がプロセシングにあると述べた。

 

TPVは、樹脂補強ゴムに比較し性能は劣っていたが、当時存在したTPEの性能レベルは十分に満たしていた。1981年にMonsantoによるEPDMとPPによるTPVの工業化(サントプレーン)が行われた。その後30年間は、積極的にTPEの開発が行われ、1982年にAtochemによるポリアミド系TPE、1987年にはダイキンによるフッソ系TPEの工業化がされている。

 

TPVについては、この30年間樹脂補強ゴムを目標に開発が進められ、21世紀に入り、自動車用ゴム部品を置き換えるまでに至った。また、学会報告も多数行われ、樹脂が海で加硫ゴムが島なのに、柔らかいTPVを製造できる原理も分かってきた。

 

ゴム会社で樹脂補強ゴムの開発が行われた理由は、タイヤのビード部に用いる硬くてしなやかなゴムの製造技術が存在しなかったからである。すなわちそのようなゴムを製造する為には、繊維などを用いて複合化しなければならなかった。

 

そもそも柔らかいゴムを製造することは易しかった。分子運動性の高いゴム分子の加硫密度を低く設計すれば柔らかいゴムを製造できる。しかし硬いゴムは難しかった。加硫密度をあげるとゴムの靱性が著しく低下するのだ。そこでゴムにフィラーを添加し、ミクロ構造で複合化する技術が誕生する。フィラーにはカーボンブラックやシリカゾル(ホワイトカーボン)が用いられる。

 

フィラーと架橋密度で硬度と靱性のバランスの取れたゴムを設計する技術が100年以上続いた。しかし、車の重量を支え振動吸収も可能な硬いバネのようなゴムは、フィラーと架橋密度のバランスを調整するだけでは実現できず、繊維などでビード部を補強するマクロ的な複合を行わなければいけなかった。

 

フェノール樹脂を海に加硫ゴムを島とする樹脂補強ゴムは、1970年末に市場に登場したが、フィラーと架橋密度のバランス調整だけでは到達できない硬度と振動を吸収するバネの役割を見事に果たしていた。しかし、この樹脂補強ゴムをTPVで実現することは難しかった。

 

 

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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