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2014.01/30 ケミカルアタック(2)

ケミカルアタックは、環境応力割れとも呼ばれている。樹脂のまわりにケミカル製品が存在すると、本来の強度以下の応力または歪みで樹脂が破壊する現象は、いつでも発生するわけではない。もしいつでも発生する現象であれば、ケミカル製品の容器を樹脂で作ることができなくなる。

 

いつでも発生するわけではないので科学的に取り扱いにくい問題である。例えばポリスチレンでもSPSの場合にはケミカルアタックを起こしにくい。ゆえにSPSの箸なども登場している。この経験からケミカルアタックは非晶質相が多いと発生しやすい、という直感がはたらく。

 

ここで、ABS樹脂やPC、PC/ABS樹脂でケミカルアタックによる故障が多いのはそのためか、と思わず膝を叩いた人は樹脂を少し知っている人である。一方ポリエチレンやポリプロピレンが脆くなって痛い目に遭った人は納得がゆかない。実は結晶性樹脂でもケミカルアタックは起きるのである(注)。

 

ただし、ケミカルアタックが起きたときに樹脂の種類によりその破壊機構が異なる。結晶性樹脂でケミカルアタックが起きた場合には脆性的に破壊する。例えば界面活性剤の水溶液をポリエチレン容器に入れて販売しているケースがあるが、「年」のオーダーでケミカルアタックが進行する。ゆえに破壊したときにケミカルアタックだったのか経時劣化なのか分からないことが多い。そのため、知らずに自動車窓用ウオッシャー液をポリエチレン容器に入れて販売している例を店頭で見る。

 

このようにケミカルアタックでは、非晶質樹脂でも結晶質樹脂でも発生し、その発生機構が異なるが、非晶質樹脂特有の問題として扱っている教科書も存在するので注意が必要だ。科学的には非晶質樹脂特有の問題、と説明した方が説明しやすいからだが、ケミカルアタックに対して科学的に取り組むと問題解決できない、というぐらいに心がけておいた方が痛い目に遭わない。

 

(注)PCは、非晶性樹脂に分類される場合があるが、正しくは結晶性樹脂である。結晶性樹脂とか非晶性樹脂という呼び名は、成形体の状態で業界では使われている。しかし、正しくは全く結晶化しない樹脂に対して非晶性樹脂という言葉を使用すべきである。例えばポリオレフィン樹脂で光学用途に使用されているアペルという樹脂は結晶化する。しかし非晶性樹脂として売られている。そのため樹脂が結晶化して引き起こす問題を見落とす。

 

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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