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2014.02/04 STAP細胞発見の意味(4)

小保方さんが最初に研究テーマを見いだしたヒューマンプロセスにおいて、たまたま実験を担当したという幸運と、その仕事を担当して現物現場主義により研究テーマとして設定するまでのプロセスを指摘した。前者の幸運のプロセスについては、まだ公開されていないので書けなかった。

 

ここは手前味噌になるが、高純度SiCの発明における幸運の例をもとに夢をビジョンに具体化するまでの彼女の真摯な努力が果たした役割を述べてみたい。

 

30年近く前、まだ高分子をブレンドしてセラミックスを合成する技術が知られていなかった時代に世界に先駆け、フェノール樹脂とポリエチルシリケートから高純度SiCの発明を実現できたのも幸運のプロセスであった。しかしその幸運に巡り会えたのは、専門外であり手段や方法の具体的アイデアが無かったために、高分子を前駆体にして高純度SiCを合成したい、と一途に思いビジョンの具体化に努めた結果だと思っている。

 

ゴム会社で高分子の難燃化技術開発を担当していたときに50周年記念論文の募集があった。世間はセラミックスフィーバーの嵐が吹き荒れ、どこもかしこもセラミックスの研究をやり始めたことが新聞に毎日のように紹介されていた。社長はファインセラミックスの新事業を基本方針として全社員に示していた。このような背景から高分子技術をもとに半導体用高純度セラミックス事業を立ち上げる夢を書き50周年記念論文として応募した。

 

しかしこの論文はボツとなったが、無機材質研究所留学の機会を得た。セラミックスなど専門外だったので慌てて勉強を始めたが、フェノール樹脂天井材の開発を担当していたのは幸運だった。高純度SiCの原料として使用することになる重要な素材だったからである。

 

無機材質研究所に留学してからは、ビジターとして粛々と指示された業務をこなす毎日だったが、ゴム会社の人事部からかかってきた昇進が遅れるという電話がきっかけで、モチベーションダウンを心配したI総合研究官から1週間自由に実験をしても良い、といわれた。この一週間を活用して高純度SiCの合成技術シ-ズを生み出すことができた。

 

高純度SiCの新しい合成技術について最初から明確なアイデアがあったわけではないが、半導体用セラミックスを高分子から創造する、というビジョンを持ち続け努力した結果幸運を活かすチャンスが訪れたと思っている。

 

恐らく彼女も万能細胞に対する大まかなビジョンを持ち続け、細管で細胞が刺激を受けて幹細胞になるという現象に遭遇した幸運を活かすことができたと推定している。すなわち幸運を引き寄せるヒューマンプロセスとは、夢を少しでも具体化したビジョンとして描き、そのさらなる具体化と実現に向けて真摯に努力を続けることではないか、と考えた。

 

その努力の過程で、ビジョンのカテゴリーで新現象に遭遇したときに、他の人と異なる視点で現象を捉えることが可能となり新発見に至る。すなわち新現象が偶然彼女の前に現れたのではなく、彼女のビジョンを具体化しようとしていた日々の努力があったので、多くの人が見落としていた現象を新現象として捉えることができたのだ。

カテゴリー : 一般 連載

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