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2014.05/01 カオス混合装置をどのように考案したか

発明の方法には、科学的成果を科学的に展開し発明に至る方法以外に、蓄積された経験を基に、要求される機能を実現する方法を探り、逆向きの推論を活用して技術を構築する方法もある(www.miragiken.com)。

 

PPSと6ナイロン、カーボンの処方をコンパウディングしてできる構造は、PPSと6ナイロンが非相溶系なので、バンバリーを使用したときにできる特許の図(特2010-195957)に示したような、PPSに島として分散している6ナイロン相にカーボンが分散した高次構造、あるいは二軸混練機を使用したときにできるPPS相にカーボンと6ナイロンの島相がばらばらに分散した高次構造となる。

 

カーボンのクラスターの状態で抵抗が大きく変動するパーコレーション転移をうまく制御するためには、カーボンを島相に閉じ込めた前者の構造が好ましいが、この構造では6ナイロン相の弾性率が上がり、材料全体の靱性を劣化させてしまう問題がある。後者では材料の靱性について柔らかい6ナイロンが分散した効果でPPS単一組成のマトリックスよりも改善されるが、カーボンのクラター制御が難しく、押出成形した時にベルトの面内抵抗分布が大きくばらつく。

 

すなわち、抵抗制御の観点からは前者が好ましく、ベルトの力学物性の観点からは後者が好ましい高次構造である。これらの実験結果から最も望ましいと期待される構造は、非科学的ではあるが、6ナイロンがPPSに相溶しカーボンが弱い凝集力で島相となっている高次構造である。この考えに至ると、6ナイロンをPPSに相溶させるプロセシングを実現する技術が必須となることが見えてくる。

 

非相溶系であるPPSと6ナイロンを相溶させるプロセシングは、フローリーハギンズ理論を信じる限りリアクティブブレンドだけとなる。この点については後日述べるが、もし二軸混練機のような連続式混練機で実現できたならば、マトリックスのTg以下の温度で相溶状態のまま急冷すれば、複写機の使用環境でその相溶状態が保持された材料になることは、高純度SiCの前駆体高分子を合成した経験から容易に思いつく。

 

このプロセシングは、二軸混練機からストランドを急冷して引き取れるようにすば実現できるので一般に行われている方法で容易である。残るのは、二軸混練機あるいは類似の連続式混練機で相溶状態を創りこめるかどうかという問題である。

 

この問題解決に向けて、二軸混練機以外に剪断力の大きいKCKと呼ばれる石臼式混練機で複数回混練したり、二軸混練機とKCKを組み合わせたりしてPPSと6ナイロンが相容するかどうか実験したが相溶しなかった。そこで、ゴム会社時代からの経験を総動員してカオス混合装置を試行錯誤で工夫し考案した。非科学的で怪しいかもしれないが、STAP細胞と異なり、現在も生産で使われているのでこれは本物の技術である。但しそこで起きている現象は現代の科学のレベルでは非科学的現象として扱われる。

カテゴリー : 高分子

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