2014.05/02 有機高分子と無機高分子の混合
高分子のプロセシングに慣れた1980年代には、セラミックスフィーバーの嵐が吹き荒れ、セラミックスの高純度化が話題になっていた。高温度で安定なファインセラミックスを合成後高純度化するには再結晶化以外に手法が無くプロセスコストが問題となっていた。
例えば、半導体用SiCであればアチソン法でインゴットを大量に生産できるが、その純度が低いため昇華再結晶プロセスが必要となり、プロセスコストが嵩み当時1kgあたり10万円以上の価格で取引されていた。ジメチルポリシランを用いる高純度化プロセスも提案されていたが、前駆体となる高分子の価格が高いという問題があった。
カーボン源としてフェノール樹脂(当時350円/kg)、Si源としてポリエチルシリケート(当時750円/kg)を用いることができれば、低コストで高純度SiCの前駆体高分子を合成可能となる。しかし、χが大きなこの二種の高分子を均一に混ぜて高温度まで均一なポリマーアロイを合成することは困難に思われていた。
ここでワンショット法の知識が役立ち、酸触媒を用いて安定な前駆体を合成することに成功した。この方法で合成された前駆体がどのくらい均一であったかは、前駆体を炭化した電子顕微鏡の写真と反応速度論の解析結果から推定された。
すなわち前駆体高分子から得られた炭化物はSiO2とCが分子オーダーで均一になっており、その炭化物を用いてSiC化の反応を行うと均一素反応の取り扱いが可能であった。この方法で合成されたSiCは半導体分野の製品に用いるには十分な純度であり、現在でもピュアベータという商品名で事業が継続されている。
高純度SiCの反応機構は、均一素反応の取り扱いで解析できたので分子レベルの均一性を達成していると推定され、これはχが大きな高分子の組み合わせを「反応させて」均一にする手法の効果である。このようにリアクティブブレンドは、ラテックスで二種類の高分子を混合するよりも高いレベルで高分子を均一にできる。
構造の異なる高分子を二種以上混合するプロセスが必要となるケースは多い。そのとき用いられる考え方は、フローリー・ハギンズ理論である。この理論によれば樹脂補強ゴムの相分離や、それがプロセスの影響を受けロバストの低い条件が存在するのも理解できる。また、χの大きな高分子を組み合わせて均一に混合された材料を設計したい場合には、ラテックスで混合する手法よりもリアクティブブレンドが有効であるが分子構造に制約が多い。
カテゴリー : 高分子
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