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2014.06/30 カオス混合(19)

製品化ステージでコンパウンドの内製化など提案しても反対されたかもしれないが、運よくグループ内の別会社でコンパウンド工場を立ち上げることができ、外部購入のコンパウンドと同等の扱いで開発を進めることができた。開発を進めた、といっても土日を利用したボランティア活動だ。製品化ステージなので集めなければいけないデータは生産に関わるデータだけである。根津にある中小企業のご厚意で実験を進めることができた。

 

休日にそのような努力と苦労をしていたことなど同僚の誰も知らないと思っていたら、問題社員のひげ親父だけは気がついていたようだ。出世するとたいへんですな、と言ってきた。この仕事ができてもこれ以上出世できる年齢ではないので出世目的ではない、と答えたら、俺も最後の仕事だからいい仕事をしたい、と言ってきた。

 

まっとうな人物で安心した。臭いのきつい煙草をパイプで吸い、サングラスをかけて現場で仕事をしているその姿は、およそサラリーマンの姿ではなかった。この姿は最後まで変わらなかったが、仕事に向かう姿勢は出会った時と180度変化し、積極的になっていた。知識欲も旺盛であった。

 

二軸混練機など扱ったことが無い、というので面白い男と二人並べ混練の講義を行った。当方も二軸混練機の扱いは初めてだった。しかし中古機の整備など土日のボランティア活動で薀蓄を語れる程度にはなっていた。その上混練の教科書には書かれていない高分子融体のレオロジーについて講義をしたので先生と呼ばれるようになった。ゴム会社で教えてもらったことがサラリーマン最後の仕事で活きた。

 

できあがった技術もカオスだがこの時の二人も多分にカオスであった。ただこの二人がいなければ、短期の生産立ち上げから安定生産維持に至るまで供給をショートすることなく立ち上げることができなかった、と思っている。

 

この二人がどこまで技術を理解して仕事に臨んでいたのかは不明であるが、メヤニはじめ工程で発生した細かいトラブルの対応は見事だった。科学的ではなく、現場的発想のヒューマンプロセスで動きに無駄は無かった。人手もなく予算も無かったので問題解決できればそれでよし、という姿勢を貫いた。お互いが初対面で性格もカオスであったが、量産開始後は安心して二人に仕事を任せていた。

 

ただ、化学工場の中でひげ親父に堂々とパイプを吸われた時には慌てた。マネジメントで苦労したのは、プラントからは遠かったが喫煙室まで行く習慣をつけなければいけないことぐらいであった。

 

 

カテゴリー : 連載 高分子

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