2014.07/10 混練技術(2)
混練技術の連載を書くつもりは無かったが、台風情報の台風を見ていたら一軸混練機に見えてきた。そして意外と多い混練機に対する誤解を思い出した。
二軸混練機がかなり昔から存在した、と思っている人が多いが、少なくとも今日のような大容量を混練できる高性能な装置が生まれたのは、1980年以降である。第二次世界大戦以前に存在したのは押出機で混練能力は低い。もし1980年以前の混練機があったならそれでポリマーアロイを混練しようと思わない方が良い。みかけはできても高性能化は難しい。
このあたりを混練技術の奥深さを分かっていない人に理解させるのは難しい。とにかくスクリューが二本ついてて、高分子を二種類投入すれば混ざって出てくる、それだけで安心している人がいる。最先端の混練技術ではナノオーダーの制御までできるのである。また、自由体積の制御もやろうと思えばできる。一応ゴム業界のレベルの混練技術らしき練りができるようになったのは2000年以降である。
2000年頃に国研で高分子精密制御プロジェクトが推進された。終了したときに何も成果が出なかった、という陰口を聞いたが、それはとんでもない誤解である。当方はこのプロジェクトに関わっていなかったが成果報告会を聞きに行っていたから成果を理解できた。
その会場では悪い評判が多かったが、このプロジェクトでは技術者が21世紀の高分子材料開発でやらなければいけない事が具体化された、と思っている。そのような結論は無かったが、成果報告会を聞いていて思った。
批判が多かったのはL/Dの大変大きな二軸混練機を作ったことである。伸張流動を重視したスクリュー設計でナノオーダーまでの制御が可能といわれた(注)。ウトラッキーの伸張流動装置も検討された。また、剪断流動の極限を追究した高速混練機も開発された。
それらは直接産業界に応用されることは無かったが、基礎データあるいは考え方は重要で、2005年に単身赴任して中間転写ベルトの開発を行うときに大変役だった。無駄な研究を行わなくても確実な技術イメージを描くことができた。
(注)伸張流動を活用して分散混合を進めようとすると大変長い二軸混練機が必要なのである。
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