2014.07/13 混練技術(5)
たまたま倉庫で見つけた小型の二軸混練機のスクリューセグメントは伸張流動が注目される10年以上前の古い設計であった。すなわちニーディングディスクとロータの組み合わせ部分がスクリューに二カ所存在し、剪断混練を行うのにちょうど適したセグメント配置になっていた。
外部のコンパウンドメーカーは伸張流動重視のスクリューセグメントでPPSと6ナイロン、及びカーボンを混練していた。そのためカーボンの凝集粒子は細かくなり、その大きさは不揃いで樹脂の中に分散した高次構造となっていた。特許にも書いたが、同じ組成のコンパウンドを剪断混練すると、大きさの揃ったカーボンの凝集粒子が均一に分散した高次構造の材料ができる。
すなわち公知の説明であるが、剪断流動でカーボンを分散するとその分散粒径はある粒径までしか到達せずナノオーダーレベルまで分散ができないが、伸張流動を行うとフィラーをナノ粒径まで分散できると言われている。だから、2000年以降伸張流動重視の混練の考え方が普及した。外部のコンパウンドメーカーもそのような技術思想でコンパウンドの混練を行っていた。
教科書には伸張流動の分散効率の高さが説明されているが、ことカーボンに関しては剪断流動の効率が高いように思われる。ただし凝集粒子の大きさを小さくできないが、均一の大きさの弱い凝集状態で全体に均一に分散した方が良い結果の得られる場合がある。すなわちパーコレーション転移を制御して10の9乗Ωcmという中途半端な抵抗を実現したい時である。
カーボンの体積固有抵抗は1Ωcm前後なので、そのまま分散制御を行うと、パーコレーション転移が急峻に生じる。しかし、これを弱い凝集体の粒子にして、その粒子の体積固有抵抗が10の4乗Ωcm程度にすると、絶縁体の樹脂に分散し、その複合材料の体積固有抵抗を10の9乗Ωcmでも安定に創り出すことができる。
たまたま使われなくなって倉庫で何年も眠っていた二軸混練機が頭に描いていた理想的な混練機だった。ただしL/Dは40程度なので少し短いのが心配だったが剪断流動の効率の高さで無事目的を達成することができた。さすがKOBELCOマークである。ただ、これでは吐出量が小さいので量産ができない。
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