2014.07/20 追い出し部屋は本当にあるのか
「追い出し部屋」と呼ばれる問題が人事権の乱用として批判を受け、デスクワーク主体の仕事から、肉体労働の必要な仕事などに異動させた社員を今秋にも元の職場などに戻すという記事があった。かつてバブルがはじける直前に某社の「座敷牢制度」が新聞に取り上げられたことがある。座敷牢という呼び名も凄いが、追い出し部屋という呼び名にも愛情が無い。
このようなニュースは、経営者やその会社に批判が集まりがちである。また新聞表現も会社側の対応に批判的になり、「追い出し部屋」とか「座敷牢制度」とか過激になる。しかし、この会社はブラック企業ではなく、優良企業である。また、このような施策で社内風土がどのように変質していくかは不明だが、少なくともひどい社内風土という評判も聞かない。
座敷牢と騒がれた会社では、新聞で問題が取り上げられた後、当方のFDへのいたずらが起き、数年後には新聞に載るようなとんでもないできごとが起きたりして、社内風土が入社した時から大きく変質していった。当方はある種の恐れを感じ写真会社へ転職したが、20年経過し、講演者として招待された時に、当方が入社した風土に戻っている変貌ぶりを見て驚き、経営者の努力と苦労に敬意を表したくなった。そして組織風土とは経営の努力で大きく変わると言うことを学んだ。
ゴム会社では買収したアメリカ企業の立て直しに10年以上の時間がかかり、その間血のにじむような経営努力がなされ、その過程で新聞が書き立てたような早期退職者問題が発生した。会社は倒産しそうな極限の状況であり、決して安易な判断で行われていたわけではない。新聞が騒ぎすぎている、と思った。しかしその厳しさは風土の変質を招いた。
ただし、企業としては早期退職者を募って人件費を削減したかっただけである。手順として新しい職場を紹介しており、無理矢理従業員を退職に追いやったわけではない。新聞の「追い出し部屋」という表現は少し過激すぎる。
ドラッカーは知識労働者の働く意味を「貢献」と「自己実現」にあると定義した。この定義に従えば、知識労働者は会社へ「貢献」する努力をしなければいけない。自らの存在が会社に迷惑をかけている、と思われたなら、「貢献」するにはどうしたら良いのか自ら判断しなければいけない。
当方はゴム会社で6年間苦労して育てた高純度SiC事業を住友金属工業とのJVとしてスタートし、これからというところで転職した。高純度SiCを製造する技術は完成し、当方でなくても開発を進められる状況だったので、自己の身の振り方を真摯に考えた。
その結果専門とは異なる分野への転職という道を選ぶことになった。辛い選択ではあったが、知識労働者が真摯に判断しこのような決断をしなければ事態の打開ができない状況だった。当方が自ら身を引いても高純度SiC事業は20年以上経った今もゴム会社で続いている。仕事を継続したかった思いは今でもある。
もし知識労働者が「貢献」と「自己実現」を真摯に考える習慣になっていたら、「追い出し部屋」や「座敷牢」と呼ばれるような手段を経営者は取る必要は無くなる。弊社の研究開発必勝法プログラムには、体験に基づきこのような知識労働者の問題を解決するプログラムについてオプションとして用意しています。
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