2014.08/01 技術者の企画提案力(6)
これまで企業では研究と開発を分けてきた。また研究者と技術者という分類も存在した。ゴム会社で半年の研修を終え配属されたのは研究所だった。指導社員は関数電卓でレオロジーのシミュレーションをやっていた技術者だった。運が良かった。研究所には研究者が多くいて指導社員のような技術者は少なかった。また研究者から職人になっていた人もいた。
32年間企業における研究開発について考えてきた。ゴム会社では、当方は研究者と見なされた。指導社員から教えられたスタイルをかたくなに守って仕事をした12年間であった。指導社員は優れた企画マンでもあった。樹脂補強ゴムを用いた防振ゴムは、彼の手による企画であった。
熱可塑性エラストマー(TPE)の研究が盛んに行われていた時代に、樹脂相の海とゴム相の島から発現される機能が防振ゴムの設計に最適であると睨んで、それをシミュレーションで示し、企画にまとめ上げた。配属されて指導社員から仕事の説明を受けたときに用いられた資料はその企画書であった。
優れた企画書であった。その結果1年の予定のテーマを3ケ月でまとめることができたが、これはサラリーマンとしてやってはいけない事であった。テーマが終了したという理由で、指導社員は新たな企画をしなければならず、当方は軟質ポリウレタンの研究開発を行っているチームへ異動となった。
3ケ月後指導社員の企画発表会があり、指導社員は新たな企画を持って横浜工場へ転勤した。指導社員はアイデアマンというよりも実務能力の長けたレオロジーの専門家であった。指導された期間は短かったが、研究開発について言葉ではなく実務を通して指導を受けた。「今の仕事を行いながら、次の新しいテーマを常に考えろ」これは指導社員の口癖であった。
カテゴリー : 一般
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