2014.08/07 技術者の企画提案力(11)
某会社の追い出し部屋の記事を読んでから、今どきの技術部門の余剰人員をどのように処遇し指導したら良いのか考えながら書いている。結局30年以上前の指導社員の思い出になってきた。当方にとっては恋人以上の存在なのかもしれない。その人から聞いた企画を考えるポイントは、1.企業性、2.市場規模、3.投資額、4.技術要素。
技術要素が最後になっているのは、技術者にとって易しいことだから、特に考えなくても良いかもしれない、と言っていた。市場規模や投資額は経営者から必ず尋ねられる項目であり、見落としがちなのが企業性なのでトップにくる、とのこと。
企業性とは、その企業でやる価値があるかどうか、という問題である。昨今の企業の社会的責任や環境問題が問われる時代では、市場規模と投資額の関係において単純な利益のみ考えていては事業継続が難しい時代である。その意味で、30年以上前に教えられた企業性をまず考える、という手順は今でもそのまま通用する。
さらに企業性を考えるとは、自分の勤めている会社のことを良く考える作業なので、帰属意識が高まる。また、この企業性はどのように事業に貢献すれば良いのかを考えることにつながるので、企画作業を通じて働く意味を意識することになる。
市場規模や投資額は、世間の情報から「決める」以外にない。よく世間の情報をそのまま市場規模にしている場合があるが、企業性をよく考察したならば、世間の情報の市場規模を見直したくなるはずだ。世間の情報はこうだが、よく考えてみるともっと小さいかもしれないとか、世間の市場規模とこの企画で生じるシナジーとで市場規模は二倍になるかもしれない、とか独自のイメージが浮かぶはずだ。また浮かばなければいけない。
この市場性には、企画が成功したときのシェアの推移も重要で、イメージで良いから書き加える。それは企画の目標に相当する。注意しなければいけないのは、経産省などの公的機関の発表数値を鵜呑みにする人がいる。これらの数値には、リアルなデータとフィクションが共存している。
投資額は、目標が決まれば、「えいや」で決めても良い。企画段階において細かいところで悩む必要は無い。経営に近い仕事をやっている人は、とんでもない、というかもしれないが、投資額は技術開発で小さくなることもあれば、天文学的数値になる場合も存在する。技術開発をしながら精度を上げてゆくべき数値で、当初は目標のイメージである。また、最初の企画段階では、細部まで議論しても時間の無駄になる項目でもある。
高純度SiCを社長の前でプレゼンテーションしたときには、その資料で投資額は書くな、と言われた。すなわち誤解を与える数値だからである。指導してくれた方は、夢の話を社長がどのように判断するのかを学びなさい、と言われた。高純度SiCのプレゼンテーションが終わってすぐに社長から飛んできた質問は、最初にいくら欲しい、だった。
プレゼンが成功したと思い、Vサインを上司に送ったら、社長から2億か、と言われた。上司は、もっと上だ、と手でサインを送ってきた。思わず指を4本にしたら、二億四千万円だな、と社長が言われて、会議は終了した。
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