2014.09/30 高分子の難燃化技術(14)
ポリエチルシリケートとフェノール樹脂の混合は難しかった。見かけ上うまくいったように見えても、析出したシリカ微粒子が大きくなり、シリカゾルを分散した方が良い結果となった。
この原因は、当時公開されたデータからポリエチルシリケートの加水分解速度が酸触媒で加速されるためとわかっていた。水ガラスから抽出されたケイ酸を混合する条件との違いは、エチルシリケートが加水分解したときにエタノールを生成する点である。
水ガラス抽出物はジオキサン-THF混合溶媒に分散して用いているが、両者はフェノール樹脂にとっても良溶媒だった。ケイ酸の抽出は大変だったが、目標仮説を証明するための実験としては大した検討も不要で便利だった。
水ガラス抽出物とフェノール樹脂の混合物でも高純度SiCの前駆体になるが、ポリエチルシリケートを用いたときよりもコストが不利になる。さらにすでに水ガラスとフェノール樹脂の組み合わせ特許が出願されていた。
種々の条件を検討した結果、シリカゾルの分散を検討することになったが、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂の混合がうまくゆかないことが気がかりだった。
さらに特許を調べてみても、カーボンブラックとエチルシリケートとの組み合わせ、あるいはフェノール樹脂とエチルシリケートとの組み合わせ特許が存在したが、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂の組み合わせ特許は存在しなかったので、成功すれば世界初の事例として特許出願できる可能性があった。
たかが二種類の物質を混合するだけの技術であったが、そこには科学的な制約が存在した。フローリー・ハギンズ理論である。
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