2014.10/22 技術の伝承(3)
写真会社では組織名が刻印された実験ノートが全員に無償配布されていた。そしてそのノートを使い終えると新しい実験ノートが支給されるという習慣だった。さらに組織移動や退職した場合には、刻印された職場に実験ノートを残しておくルールになっていた。
STAP細胞では実験ノートを単なるメモがわりに使用している状態が公開されたが、写真会社の実験ノートでは日々上長がチェックする習慣になっていた。すなわち日報も兼ねていたのである。
この実験ノートの習慣は研究開発部隊に良い習慣だと思った。しかし、転職して1年半後リストラでこの組織はつぶれ、新しい研究所になったが、実験ノートはその組織で作られず、習慣は途絶えた。
転職した部署がつぶれたのでびっくりしたが、新しい上長は転職のいきさつなども知らず、全くの新天地での仕事と同様の状態になった。転職した当時のセンター長は挨拶も無くさっさと退職し、後味の悪い状態となった。新しい上長との引き継ぎもなされていない状態だった。
古参の社員に過去の話を伺ったら、この部署はいつもそうだった、とぽつりと語った。これでは技術の伝承などできるわけがない。確かに当方が転職して一年半、この部署ができて3年近く何も成果が出ていない。
外から見るとおっとりした会社であったが、実際はゴム会社よりも厳しい会社だった。新組織で受け持った30名のグループについてはゴム会社同様に徹底的に成果主義の体制を組み活動を始めた。
実験ノートの代わりに新しいフォーマットの週報を作成し、実験ノートに書かれていた日々のデータを別管理とする様式にした。新しい週報のファーマットは、左上に1週間後のゴールを、右上にはそのゴールをどこまで実現できたかをまとめ、残りはゴールに関する活動報告という形式で、週単位の目標管理を行った。
実験ノートを辞めたのは、日々管理で業務がトコロテン方式なっていたのでそれを改めるため。すなわち組織ゴールを各メンバーのゴールまで落とし込み、徹底してゴール実現を目指すためだった。日々のゴールまで落とし込みたかったが、そこまで実行するとメンバーの業務の自由度が無くなる可能性があった。
実験ノートについては、会社からの配布が無くなったので、自己責任と自己実現のためのノートとしてグループ内で市販のノートを無料配布することにした。すなわち、週報を会社責任の記録とし、実験ノートは自己責任と自己実現のため、と記録の意味を明確にしたのだ。
カテゴリー : 一般
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