2014.10/26 技術の伝承(7)
特公昭35-6616特許について社内の技術者に意見を求めたところ、実施例を実験しても再現しないヘボ技術という評価ばかりであった。また、大した技術ではないから1件出願してそのままになっていたのだろう、という意見もあった。
転職して半年後学卒新入社員の中に大学院へ留学したいという希望を持っていた新入社員がいた。しかし、会社にはその様な制度が無かった。会社の近くの大学に相談し、特公昭35-6616に記載された酸化スズゾルの導電性を計測する研究をテーマにして業務の一環として通学させることにした。
この産学連携は比較的短期に成果が出た。通学して最初に行った実験で酸化スズゾルが電子伝導性であることや、合成条件で2桁程度導電性が変化する事などわかった。ここまで分かれば十分である。
あとはアンダーグラウンドで準備していたパーコレーション転移のシミュレーションプログラムで計算して薄膜を形成したときの導電性をシミュレーションした。アスペクト比の影響なども調べた。
シミュレーションの結果から効率良くパーコレーション転移を起こせば膜の力学物性に影響を与えず帯電防止膜ができることを理解できた。
さっそく実験をやってみたところ、驚くべきことにインチキ特許と言われた特公昭35-6616が再現性の高い技術で、再現性を高める因子を匠にノウハウとして隠していたことが分かった。すなわちこの特許の発明者は何らかの理由でこの特許を一件しか書くことができなかったのだろうと想像した。
カテゴリー : 一般
pagetop