2014.11/03 問題解決プロセス(1)
当たり前のことだが企業における研究開発は、ビジネスの一環である。このような当たり前の事を社会人成り立ての技術者で理解していない人は多い。科学教育が浸透し、頭の中が科学という唯一の哲学で支配されているのではないかと疑いたくなるが、面白いのは体育会系と呼ばれている社会人がいることだ。彼らは科学教育がこれだけ浸透していても問題解決において我流のヒューマンプロセスで問題を解こうとする。
ゴム会社の新入社員研修で面白かったのは、いわゆる事務系と技術系の混成部隊でグループ活動を行ったことだ。ゴム会社の場合には、技術系にもいわゆる体育会系がいたが、彼らの問題解決プロセスは直感的である。深く考えないでとにかく思いついたことをやってみる、というヒューマンプロセスである。この方法でも体系化されたヒューマンプロセスとして行われれば、立派な問題解決法である。ただし科学的とは言えないが―――。
小学校から大学まで科学教育を学んでいるのに体育会系の思考ができると言うことはある意味驚くべきことで、人間の可能性を感じた。これは入社試験を通過してきた仲間だから素直に驚き感激したことだ。当方は科学という哲学一色で完全に洗脳された状態だったから、体育会系の人類は新鮮だった。
ゴム会社の設計部門で技術実習を行ったときにも驚いた。技術部隊が体育会系の「ノリ」で研修テーマを用意していてくれたのだ。当時世界には13社タイヤ会社があり、その各社の代表的なタイヤを解剖して技術要素を取り出しタイヤ軽量化のヒントを導き出す、というテーマだった。リバースエンジニアリングというとかっこいいが、実際の業務はタイヤのカットサンプルを作成し、断面形状からタイヤの構造を解析し、構造要素と思われる部分の面積をはかる、という単純作業である。
面積を測ってその後は、というと誰も考えていない。新QC7つ道具を使って整理してみよう、ということになった。一覧表を作成してみたり、系統図で整理してみたりした。しかし、そこから何も見えてこない。テーマは暗礁に乗り上げた。新QC7つ道具には多変量解析という道具があり、これをやってみようと当方は提案した。当方も体育会系のノリに染まり使っていなかった道具を提案しただけだったが――。
「そうだ、まだこれがあった!」とすぐに皆の同意が得られた。しかし誰一人多変量解析を理解していなかった。新QC7つ道具の中で使っていなかった方法がそれだけだったので意見が一致しただけである。指導社員が社内のコンピューター部門に相談し、IBM3033の統計パッケージの説明書を用意してくれた。ただし説明は英文である。皆で手分けして説明書を読んだ。
若いということは一つの才能である。知識の無い技術領域の英文のマニュアルを前にして一瞬皆引いたが、皆で手分けして読めば一人20ページだ、という意見が飛び出した瞬間に簡単に理解できる気になってしまう。しかし、翌日が大変だった。
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