2014.12/06 非科学的問題解決事例-PENの巻き癖解消(2)
昨日は、工場で作られる食品の品質問題が車のリコールに比較し少ない状況を説明できる事件が起きたので、連載を中断した。本件は自己の体験から「安全、安心」ではない日本の状況を懸念していたところへ実体を示す事例が発生したので「非科学的問題解決事例」を中断した。
食品の異常は、真っ先に保健所へ知らせ、食品会社の「お客様相談センター」は、保健所へ連絡したことを伝えるのが正しい手順である。証拠品は保健所へ提出すべきである。
さて、PENの短時間アニール技術といっても特許を回避するためにはTg以上の熱処理以外に技術手段は無い。成膜や表面処理の工程においてTg以上で熱処理すればフィルムがしわしわになることは常識として知られていた。さらにアニールにより処理されたフィルムの物性値をクレームにした特許が出願されていたので、技術が完成しても全ての特許を回避できる可能性は少なかった。
科学の視点ではナンセンスな企画で、そのまま提案すればつぶされることは分かっていた。だから企画提案の時に実際に実験室において短時間アニールで製造されたPENフィルムもそえて提案している。
科学的に説明しにくい現象を利用した技術では、現物を示すことが周囲を説得するのに一番良い方法である。短時間アニール技術のPENフィルムは、実験室で簡単に作ることができた。そして驚いたことにできあがったフィルムの粘弾性的性質は、Tg以下のプロセスで製造される長時間アニールのフィルムのそれと少し異なっていたのだ。
未だにこの現象をうまく説明できる論文に出会っていないが、高分子の自由体積の科学的に未解明な現象であることは確かである。Tg以上の短時間アニールでも、Tg以下の長時間アニールでも高分子の自由体積は減少し巻き癖は解消される。しかしその減少過程が異なるために起きている、と想像がつく。
そしてこの想像は、その後ポリオレフィンの混練り効果やポリオレフィンとポリスチレンの相容を研究する動機につながってゆく。いずれも科学的研究の無い分野であるが、高分子の自由体積が関係している。
pagetop