2014.12/20 小保方氏の退職
小保方氏が21日付で退職を願い出たという。それに対して理研は懲戒処分を検討しているという。小保方氏の退職を残念に思うと同時に理研の対応については、違和感を覚える。
当方が半導体用高純度SiCの発明を無機材質研究所で成功した時に、その研究に対してゴム会社の社長は2億4千万円の先行投資を決断してくださった。その後8年間研究開発を行ったときの組織の対応と大きく異なるのである。
当方も30歳という若い年齢で事業のことなど十分に理解していない技術者だった。高分子の前駆体を用いたSiCの合成法については故矢島先生のポリジメチルシランの技術があったが、高分子が高価なため普及していなかった。
ポリエチルシリケートとフェノール樹脂の均一で透明になるポリマーアロイは、低価格な前駆体で未熟な技術者でもその事業の可能性について夢を描くことができた。しかしコストダウンに成功してもマーケットが無ければ事業は成立しないのである。
マーケットが無いのにビッグマウスで先行投資を受けた、と陰口を言われた。ただ、この時の先行投資において社長は10年後の夢を買う、とはっきり言われたのである。10年後のマーケットを信じ、当方も覚悟の提案であった。
先行投資をうけて1年後、マーケットが無いと言うことで20名ほどのプロジェクトは解散となり、3名となった。最後に1名となり、起死回生のためS社とのジョイントベンチャーへと突き進んだのだが、一人で担当していたときは、苦しかった。
ただ、会社の幹部の方が実験室へまれに状況を視察に来られたので、何とか期待に応えようと事業化の努力を続けることができた。一方で研究所の一部の方から嫌がらせを受けていた事実があるが、それは醜いアヒルの子の物語と思い我慢していた。
だから、小保方氏も針のむしろ状態であることを十分に理解できるが、理研の組織としての冷徹さには呆れた。またそれは野依理事長のご判断とは思えないのである。STAP細胞は小保方氏の提案には違いないが、それに対して組織としてゴーサインを出しているのである。降格処分だけで十分ではないか。
ゴム会社における8年間の開発期間において、転職する最後まで経営幹部の方は優しかった。アドバイスに従い、一部の時間を使って高純度SiC以外の研究テーマのお手伝いをしていたので、給料は減ることもなく標準の昇給額で毎年順調に上がっていた。
高純度SiCのテーマはS社とのJVがきっかけとなり、現在まで継続される事業として成功したが、先行投資から事業の芽が出始めるまで、6年かかっているのである。もし最初の一年で当方が処分されていたならば、ゴム会社の半導体事業は生まれていなかった。
STAP細胞も完璧な否定証明ができていない状況なので、小保方氏にチャンスを与えるくらいの度量の広さを理研は示して欲しかった。すでに降格処分が為されたのでそれ以上の処分には反対である。もしどうしても処分したいのなら、完璧な否定証明を完成させるべきだ。それが科学に対して本当の厳しい姿勢である。イムレラカトシュが言っているように科学では、存在するという肯定証明は難しいが、論理的に完璧な否定証明はできるはずである。それができないのは、小保方氏だけでなく理研の研究者のスキルが未熟であることを示している。
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