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2015.01/22 混練プロセス(17)

高速撹拌で生じる剪断流動でχが大きな組み合わせでも一瞬均一になる、という現象は当時の常識はずれな事実であった。そもそも混錬の教科書では剪断流動は効率が高いが到達する分散サイズに限界があり、ナノオーダーまでの分散を行うためには効率が低いが伸長流動を行う必要がある、と書かれていた。

 

また学者も同様の見方をしており、そのような学術報告も発表されていた。しかし2000年ごろ推進された高分子精密制御プロジェクトでは産総研で高分子の高速撹拌機が開発され、剪断流動でもナノオーダーまで到達できることが示された。ただしこの装置は実用性がなくあくまで実験機である。また分子量の低下もあるので世間の評価はいまひとつである。

 

ポリエチルシリケートとフェノール樹脂の混合物は液体であり容易に高速混合が可能である。酸触媒が加えられなければすぐに相分離するが両者の反応バランスを取ることが可能な有機酸(有機カルボン酸でもスルフォン酸でも良い)を添加すると透明なゲル化物が得られる。この段階で分子レベルのポリマーアロイとなっている。

 

これを炭化した生成物についてフッ酸でシリカを除去すると、あたかも線状分子二本分のシリカが抜けたような模様が現れる。すなわちシリカと炭素が分子レベルで均一に混合された化合物が得られたことになる。

 

これを1600℃以上でSiC化すると均一固相反応で見出されたアブラミーエロエーフの式できれいに整理できる反応機構でシリカの還元が行われる。

 

この反応速度論の解析を行いたくてわざわざレーザー加熱可能な熱天秤を2000万円かけて開発した。2000℃まで1分程度で急速加熱可能なこの天秤を用いて収集された速度論データはアブラミーエロエーフの式できれいに説明できた。

 

すなわち高速で発生する剪断流動は伸長流動と同様にナノオーダーレベルまで分散を進めることが可能である。10年ほど前毎分800回転以上の回転が得られる二軸混練機について書かれた論文を読んだが残念ながらナノオーダーまでの混練物が得られていなかった。すなわち高速剪断流動を実用化するのは難易度が高いのである。

 

リアクティブブレンドが一定の市場を確保し、材料開発が進められている背景には、混錬よりも容易に分子レベルの混合分散が可能であることも一つの要因である。また混錬では実現できないポリマーアロイも製造可能である。

カテゴリー : 高分子

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