2015.01/29 混練プロセス(24)
混錬により何が変わるのか?これが理解されていないと混練機の性能を評価することができない。混練プロセスにより高分子は変性されているのだが、それに気がつかず、ただひたすら二軸混練機の混練条件を変えてみてみても、目的とする物性が得られるわけではない。
また二軸混練機のどこに問題があるのかも解明できない。混合では分散が均一になっていること、とそのゴールを明確に言える。しかし、混錬は単なる混合ではなく練も行われている。そして練を活用して混合も進めている、と言うことに気がつかなければ、二軸混練機を使用して材料の開発などできない。
また、既存の二軸混練機ではゴールを実現できない場合もあることを知らなければ、材料開発はモグラたたきになる。2005年に八王子勤務から、近くには中京の熱海と言われる蒲郡があり、お稲荷さんとちくわで有名な豊川へ単身赴任した時に一生懸命モグラたたきを行っているコンパウンドメーカーに出会った。
モグラの捕まえ方と料理の仕方を教える、と言ったら素人は黙っとれ、と技術サービスに言われた。確かにそれまで二軸混練機を使用したのは、パルプ樹脂複合材料を開発しようとした時に、KOBELCOの二軸混練機を一度借りて、二軸混練機では異臭のしないパルプ樹脂複合材料はできない、という結論をだした経験だけである。
6年もPPSというモグラをたたいている一流のコンパウンドメーカーの技術者のような二軸混練機の経験は無い。しかし、3ケ月間二本のロールとバンバリーを相手に平均睡眠4時間以下という状態で格闘し、世界初の樹脂補強ゴムで某社の防振ゴムを仕上げた経験があった。混錬で高分子の何が変性されるのか豊富な分析データとシミュレーションデータ、およびそれらと実データとの突合せで混錬の理解を深くし新たなテーマの整理ができていた。モグラを当時と同じ3ケ月で料理できる自信はあった。
豊川へは左遷だったが、約30年前の課題を解決できるチャンスとなる楽しい単身赴任だった。家族にもなぜ楽しい顔をしているのか、と言われた。当時赴任する途中のドライブインで撮影した家族写真では、一人だけ楽しそうな顔が写っていた。サラリーマン最後の仕事をする覚悟もできており、後は周囲が失敗するだろうと噂していたテーマを成功させるだけであった。
カテゴリー : 高分子
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