2015.01/31 混練プロセス(26)(媒介変数としての高次構造の作りこみ)
電気特性と力学特性というまったく異なる事象のパラメーターが相関するような現象が本当に起きるのか。PPS-ナイロンーカーボンの3元系で製造された中間転写ベルトでは、そのパラメーターの一組が見つかったので、押出工程で抜き取り検査を行っている電気特性について、混練プロセスで粘弾性評価を行いその品質を管理している。
その結果、退職するまでの4年間押出工程で品質問題を起こしたコンパウンドのロットは無かった。外部のコンパウンドメーカーの技術サービスから引っ込んでおれ、と言われたのでコンパウンドメーカーとの打ち合わせはマネージャーに任せ、コンパウンドの内製化の準備を始めた時に行った業務であり、これは転職してきた若者の最初の成果である。
すなわちコンパウンド開発の最初の仕事として、ベルトを製造しなくてもコンパウンド段階でベルト性能を評価する方法について検討した。この方法を開発しようとしたのは混練プロセスだけを独立して検討したかったからだ。外部からコンパウンドを購入し開発する方針で進められていた業務に、リスク回避のための内製化検討で製造したコンパウンドまで評価する業務を推進することはマンパワーの関係で不可能だった。
また、外部メーカーのコンパウンドと同じ条件で押出してよいのかも不明であり、うまく内製化コンパウンドの開発を進めないと同じ穴のモグラと勘違いされる可能性があった。幸いにもコンパウンドメーカーのモグラは当方のコンパウンドプロセスに紛れ込まず、新たに生まれたモグラを退治するだけで済んだ。新たに生まれたモグラは、氏素性が解っていたので一発で仕留めることができた。新たに生まれたモグラについては粘弾性評価で簡単に見つけることができたのである。
中間転写ベルトの基本機能は電気特性なのに、それが力学特性を評価する粘弾性装置でエラーを見つけることができるという不思議さに、転職してきた若者は夢中になって仕事をするようになった。知識労働者のモラールは知的好奇心が刺激されれば上がる。
かつて有機合成を大学で学びながら最初に担当した仕事がバンバリーとロール混錬で一瞬モラールが下がったが、優秀な指導社員のおかげでサービス残業も苦にならず仕事に没頭することができた時のことを思い出した。
異なる事象のパラメーターが高次構造を媒介変数として相関する話は、混練プロセスを学んだ時に感動した知識の一つである。高分子物性の媒介変数を作りこむために混練プロセスの理解は重要である。
カテゴリー : 高分子
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