2015.02/19 イノベーション(10)戦略1の続き
ライバル会社からシリカをコアにしてその周囲をラテックスで被覆したコアシェルラテックスが商品化された。ちょうどそのタイミングで転職したので研究管理者として大変に勉強できる体験をした。ライバル会社から新技術が登場すると当然それに対抗した技術開発が行われる。この時どのような戦略を立てたらよいのか。
担当者はお決まりの方法として、関連する特許を調査しリバースエンジニアリングを行い、類似技術の開発を進めていた。もしコアシェルラテックスが20年以上前から存在していたならば、コアシェルラテックスの類似技術を開発しても特許に抵触しない技術を開発できる可能性がある。
しかし、その技術がまったく新規のカテゴリーであった場合には、基本特許が公開されても、基本特許の展開された膨大な数の未公開のサブマリン特許の存在を疑わなければならない。実際にライバル会社からは次々と関連特許が公開されている状態で、そのたびに開発計画を見直す、と言うことが行われていた。
酸化スズゾルの技術では、昭和35年の特許のおかげで開発を始めた時に膨大な公知技術が存在し、その公知技術の上で開発を進めることができた。しかしコアシェルラテックスのような学会でも取り上げられたばかりの技術では、公知技術は少なくライバル会社の特許群を完全に避けることはできないと予想される。実際に1年間眺めていたが、特許抜けを行うことは不可能な状態だった。
このような場合には、特許を買うか全く新規なコンセプトによる技術開発戦略を展開するのか早期に決断をしなければいけない。特許を購入する交渉をしないで同じカテゴリーの技術開発を進めても成功の可能性は極めて小さくなる。むしろ特許を購入する前提でライバル会社と同様の技術開発を進めたほうが良い。(続く)
カテゴリー : 一般
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