2015.02/21 イノベーション(12)戦略1の結論
シリカゾルをミセルにしてラテックスを重合する技術は簡単にできた。あまりにも簡単にできたので公知技術と思っていた。しかしその5年後ある専門誌にゾルをミセルにして水にオイルを分散した科学論文が紹介されており、世界初と書かれていたので慌てた。
一応特許を出願していたのだが、それはあくまでもラテックスに関する特許で、ゾルをミセルに使う方法を権利化する特許では無かった。高分子学会技術賞の審査でも某有名大学の教授が、誰でも知っている技術だ、と批判されたので、当たり前の技術だと思っていた。しかしその論文に書いてあったように、ゾルをミセルにする技術は大変新しい技術だったのだ。著名な大学教授に適当な発言を審査会でされたために技術の価値が下がった、と思っている。
しかし、デジタル化の波が押し寄せ、フィルム事業の終焉を迎え、その技術で生産されていた材料も消えたが、この技術は、超微粒子を高分子に分散する方法として簡便な技術である。もし超微粒子でゾルを製造することができれば、混練時に超微粒子を分散する技術としても使用可能である。ご興味のある方は相談していただきたい。喜んで技術を伝承いたします。
さて戦略1は当方が初めて言い出したことではなく、科学が生まれる前の技術の発展史にもその痕跡を伺うことが可能である。例えばライト兄弟が初めて飛行に成功したのは、科学の力であるが、科学が生まれるその時の学者ガリレオ以前にも人類の発明による模型飛行機の存在は知られている。例えばダビンチのスケッチにも飛行機が描かれている。古くはダイダロスとイカルス親子が空を飛んだ、とギリシャ神話に書かれている。
もっともギリシャ神話の話では鳥の羽を集めろう付けした羽なのでこれを技術として扱ってよいのかどうか異論はあるかもしれないが、鳥が空を飛べるのは羽の機能によることが古くから知られていた証拠にはなる。そしてその機能をそのまま真似たのがギリシャ神話なら、その後の人類史で登場する、鳥の羽とは異なる構造の飛行機は、すべて戦略1(開発対象(オブジェクト)の特徴になっている機能をそれがすでに実現された製品とは異なる構造で実現する方法)で生み出されてきたことになる。
すなわち戦略1は、当方が初めて言い出したことではなく、1世紀以上前の人類も技術開発において用いていた方法である。ちなみに、科学は1500年から1600年ごろにかけて生まれた哲学と言われているが、技術は人類誕生から今日まで脈々と営まれてきた人類の活動の一つである。捏造などが騒がれているように科学の発展の勢いが衰えてきた今、技術の方法論を見直してみるのも大切である。
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