2015.03/09 イノベーション(28)
イ ノベーションについて毎朝書き続けたらすでに30回近くになっていた。先日の新聞にもイノベーションとは、技術革新ではなく新しい価値を提供することとい う論を展開していた評論が載っていたが、それを読み、今イノベーションの定義を改めて問い直している風潮は「ハイコンセプトの時代」という言葉を流行らせたダニエル・ピンクの影響が大きいのだろうと感じた。
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ところで、イノベーションを狭義の「技術革新」と訳したのは、1960年代の日本だけの勘違いの可能性がある。日本で愛読者の多い故P.F.ドラッカーの1974年の著書「マネジメント」には、「イノベーションとは、人的、物的、社会的資源に対し、より大きな富を生み出す新しい能力をもたらすこと」、と述べられており、「技術革新」だけを意味するものではないことが欧米では常識になっていたと思われる。
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余談だが、高校生の時に大学紛争の余波を受け、通学していた高校で校長室封鎖事件が勃発し、1週間授業が中断された。当時新聞には「断絶の時代」というド ラッカーの著書のタイトルが見出しで取り上げられたりすることが度々あった。父がドラッカーの愛読者だったことから、この誤用について親子で議論になっ た。
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この議論は、やがて親子の擦れ違いを生み出していったが、深い意味も分からず、総括と言う言葉と同様に世代の断絶などと生意気に口にし、言葉に酔っていて誤用に 気がつかなかった。おそらく、日本独特のイノベーション=技術革新という、当時の欧米と異なる意味で流布されていったのは、その言葉の響きに酔った学者がはやら せた可能性が高いと思われる。
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イノベーションとは、本来経済的価値の革新の意味でシュンペーターが言った言葉である。それを社会的資源まで広げ、あらゆる価値の不連続的変革すべてをイノベーションと定義づけたのがドラッカーだ。それを読んだ日本人の学者が広義ではなく狭義に誤解して技術革新と訳し、ダニエルピンクの言葉で改めて日本で今イノベーションの本来の意味が取り上げられている。
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高校生の時に読んだ「断絶の時代」の「断絶」の意味も単なる世代間の意識の違いでは無く、イノベーションが引き起こされた結果としての意味である。人類の進歩の歴史で生じる不連続性の原因は技術だけでない。技術が手段の一つの場合もあるのだ。この意味で「まねべーしょん」ということを8つの戦略で示してきた。イノベーションを引き起こすのに大技の技術シーズは必要ではない。目の前の製品の新しい視点による真似でも十分だ。
カテゴリー : 一般
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