2015.04/24 科学の重要性(10)
技術を技術のまま放置していてはその伝承は難しい。技術を科学としてまとめることができれば、時代が過ぎても科学という哲学がある限り、誰でも正しくその技術を実現できる。科学では不変の真理を基に知識を体系化できるからだ。科学の重要性はここにある。
特公昭35-6616の技術は、大変優れた透明フィルムの帯電防止技術だったが、科学としてまとめられていなかったので、平成の時代になるまで実用化されなかった。
酸化スズの導電性について科学的に解明されていなかったこともあり、結晶性酸化スズが高い導電性を持っている、という奇妙な特許も成立している。科学では真理がすべてであるが、技術では機能を実現できれば、真実がどうであれ許される。
透明フィルムの帯電防止技術開発では、高純度SiCの時と同様に可能な限り、科学的に解明することに努めた。パーコレーション転移とインピーダンスの関係についても、福井大学客員教授時代に青木先生のご指導を得て、数値シミュレーションで現象理解に努めた。
そしてこの成果は、退職5年前に担当した中間転写ベルトの開発に生かすことができた。中間転写ベルトでは、パーコレーション転移を起こしたドメインをPPSマトリックスに分散し、パーコレーション転移を起こさないようにする技術を開発した。
科学の重要性は、真理が体系化されたときに、新たな真理を生み出す効果がある点である。もし体系化された真理から論理的に導き出された仮説が間違いであったなら、科学の体系に間違いが潜んでいることになる。
カテゴリー : 一般
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