2015.04/25 科学の重要性(11)
PPSを用いた中間転写ベルトの設計は、酸化スズゾルのパーコレーション転移を制御した帯電防止技術開発で得られた次の成果を用いた。
1.導電性粒子と絶縁性バインダーの組み合わせにおいて、両者に相互作用が無ければ、パーコレーション転移は確率的に生じる。
2.パーコレーション転移後に生成する材料の導電性は、微粒子とバインダーの関係で決まる抵抗が安定に生成する(カーボン粒子を用いた場合には、カーボン粒子の抵抗で変わるが、ほぼ100から10000Ωcmの体積固有抵抗となる。)。
3.導電性粒子間の導電機構はホッピング伝導であり、固く凝集させた場合には、導電性粒子そのものの体積固有抵抗の10倍の状態まで実現できるが凝集力が弱まると100倍前後までその値は変動する。
この科学的成果を確認するために、6ナイロンにカーボンを分散させた後それをPPSへ分散し、カーボンが分散しているナイロンのドメインがパーコレーション転移を生じる現象について観察した。
科学的成果から予想された体積固有抵抗の中間転写ベルトを押出成形で製造することができた。しかし、ナイロン相のドメインが大きいために、紙のような脆いベルトであり、実用性が無い。
6ナイロンの相をPPSに相容させればドメインを小さくできる可能性がある。しかし、6ナイロンとPPSの相容については、フローリーハギンズの理論から導かれる制約があり、このアイデアは科学的に否定される。
科学は重要であるが、科学だけに頼っていては、商品としての中間転写ベルトを完成させることができない。科学の成果を活用し、新たな現象を推論する作業は、大学で十分な訓練を受ける。
しかし、科学的ではない機能を活用できるようにするプロセスについては、社会に出るまで訓練の機会は無い。STAP細胞の騒動でもこの点の問題が露見したが、あまり注目されなかった。
それよりも大学で十分な訓練を受けなかった(されなかった?)未熟さが問題とされた。科学的で説明できない機能を実現するには、技術開発で用いられる問題解決プロセスしかないが、これを訓練する機関が無い。
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