2015.04/29 科学の重要性(14)
故ウトラッキーが20世紀末にEFM(The extensional flow mixer)を発明したが、あまり普及していないようだ。この装置は、細く鋭利なスリットで伸張流動を発生させ、高分子のナノオーダーレベルのブレンドを可能にする。欠点は流動抵抗が大きく生産性が悪い点である。
彼は伸張流動に着目したが、カオス混合のような急速に長く引き延ばす特殊な伸張流動までには思いが至らなかったようだ。科学者と技術者の違いかもしれない。この装置の面白い点は二軸混練機の先に取り付けて使用するパッシブな装置であることだ。
EFMでは無数のスリットのため吐出量を増やそうとすると大型設計しなければいけない。しかし、二軸混練機の先に取り付けるアイデアは秀逸で、このアイデアのマネをした装置を作ってみることにした。
但し、スリットを平行平面にして急速な引き延ばしの流動が発生するようにした。もしカオス混合というものが指導社員の言われたように効率の良いものであれば、三段程度でも混練は進行するはずである。
科学的に設計されたEFMを参考に30年前の妄想技術を作ってみたら驚くような結果が出た。PPSと6ナイロンを二軸混練し、この装置に流してみたら透明になって吐出されたのだ。それもPPS単独よりも透明度が高いので驚いた。
フローリーハギンズの理論では相容しないはずのPPSと6ナイロンが相容したのである。科学を技術が追い越した瞬間である。この技術には科学で証明されていない新しい現象が起きているはずで、それがなんであるのか科学的に説明しようと、今、努力している。
科学の良いところは、科学の成果を集めてきて、それらと比較しながら検証できる点である。科学論文の捏造が厳しく弾劾されるのは、成果の再利用が不可能になるからである。
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