2015.05/14 問題解決(12)
水素燃料電池車「ミライ」(www.miragiken.com )を世界で初めて販売した「技術の」トヨタ自動車が2兆円を超す最高益だという。モーターショウやレース場で時折社長を見かけるが、トヨタの元気さはこの「行動する」社長に象徴されている。しかし利益率は傘下のスバル自動車が高い。
すでにこの活動報告で書いたように同じ自動車会社でも会社全体のシステムが異なるために利益率に差が出る(注1)。スバル自動車は、発売する車がすべてヒットしており、注文から2ケ月3ヶ月も待たされることが多いという。北米が好調なのと、国内では燃費の良いダウンサイジングターボエンジンを積んだレボーグが人気なためだ。
そのレボーグには、新車発売から1年たって、ようやくサンルーフもオプションとして用意された。1年ごとに同じ車が改良されて(これを年改と呼んでいる)販売されるのもスバル車の特徴だ。スバル車を購入するときには1年後に同じ値段でさらに良い車になっていることを覚悟して購入する必要がある。(注2)
換言すればスバル車を購入する場合にフルモデルチェンジ直前の車が最もお買い得、と言うことになる。恐らくインプレッサは来年フルモデルチェンジされるはずなのでかなり熟成されているお買い得車だ。
ダウンサイジングターボエンジンと言えば、グリーンディ-ゼルと同様にヨーロッパで流行している省エネ技術だ。日本ではトヨタ自動車が先鞭をつけ、ホンダと競争しているハイブリッド(HV)エンジンが省エネ技術として有名である。
スバル自動車は、開発陣の規模がトヨタ自動車に比較し劣勢なので、マーケティングでは北米に注力するなど選択と集中を徹底した。今やポルシェしか採用していない独特の水平対向エンジンのダウンサイジングターボ化に技術を集中し、1.6lのエンジンで2.5l並の馬力を出すことに成功した。平成26年度燃焼学会技術賞やアメリカの10ベストエンジン賞などを受賞している。
これは、トヨタとホンダがHV化に進んでも、独自の戦略を意志決定し市場に付加価値を生み出しイノベーションを起こした優れたビジネスモデルの成功例だと思う。車のデザインは昔ながら悪いが(スバリストはそこが良いというらしい)、1.6lで2.5l並の性能をレギュラーガソリンの一般車で実現しているのは、驚くべきすごい技術だ。
値段も高いが---。1.6L車の値段になればもっと売れる。2Lを4L並のパワーにしたエンジンを搭載するS4は、その性能から付加価値が高く割安感があるが、1.6Lターボエンジンは、インプレッサ並の価格設定にすべきだろう。そうなれば、ものすごい付加価値を市場に生み出すことになる。S4がトヨタのマークXのお客を食って売れているように、とんでもない売れ方をするのではないか。(明日へ続く)
(注1)システムというのは、機械的なシステム以外に概念的なシステムも考える必要がある。
(注2)
毎年新しくなるペンタックスの一眼レフデジカメと同じだ。もうすぐK3の新型K3-Ⅱが出る。しかし、転職した写真会社では同じ写真業界でもペンタックスとは少し異なっていた。
自動車業界も同様で、トヨタ車ではスバル車のような年改は無く、定期的なマイナーチェンジの時に少し手直しされるだけである。会社により新製品開発のシステムが異なる様子は、市場にアウトプットとして出てくる商品を観察していると理解できる。
同じ業界だからといって、ビジネスプロセスも同じとは限らない。その昔、三菱自動車ではリコール隠しが何度も行われたが、多くの自動車メーカーではリコール隠しなどできないシステムになっている。社長が頭を下げてもビジネスプロセスのシステムが変わらなければ何度でも起きる。
三菱自動車の例は、ビジネスプロセスにおけるシステムというものの重要性を示している。すなわち問題解決においてシステム認識が重要である。問題が起きているときにシステムの見方を変えなければいつまでたっても頭だけを下げることになる。
三菱自動車で繰り返しリコール隠しが起きたのはそのためだ。最近三菱自動車でリコール隠しが行われていないのは、社内のシステムが変わったためと見ることもできる。同時にスバルのWRXと競ってきたランエボの開発も無くなった。
カテゴリー : 一般
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