2015.06/02 混練技術の難しさ
混練技術は科学的解明が難しい現象が多く、またナノレベルで複雑な現象が同時に絡み合いながら起きているので解析が難しい技術である。一種類の高分子だけを混練してもシミュレーション通りにならない場合がある。なぜなら混練プロセスでは、ただ高分子を混ぜているだけではない。同時に物理的な変性もおきている。
光学用ポリオレフィン樹脂だけを混練すると面白い現象を観察することができる。現象の変化の様子は、ポリオレフィン樹脂の種類で少し異なっているが、これらの樹脂は、側鎖を嵩高くし見かけのTgを高くする分子設計が採用されている。
すなわち側鎖を嵩高くすることにより、オレフィン樹脂の一次構造の運動性を抑え、耐熱性を改善している。これは嵩高い側鎖の立体障害を活用し分子運動をしにくくする分子設計である。ゆえにコンフォメーションが変化して立体障害の効果が少し変わると、分子運動性に影響が出て耐熱性が変化すると言うことが起きる。
混練では混練条件をうまく選ぶことで、このコンフォメーションの変化を優先して起こすことが可能である。これは教科書に書かれていない「技」だが、経験でこのような技が存在することを発見した。この技を使い、光学用ポリオレフィン樹脂だけを混練すると、ポリオレフィン樹脂のTgを変化させることができる。
例えばポリスチレンを水添して製造されたポリオレフィン樹脂の場合には、ポリスチレンのTgと同じTgを持った材料に変性することが可能である。しかしこれは困った現象である。なぜならわざわざTgをあげるために水添したわけで、それが混練でTgが低下した材料に変性されてしまうからである。
このTgが低く変性されたポリオレフィンを再度混練すると、またTgが高い状態のポリオレフィンに戻すことが可能である。ただTgを変化させて遊んでいるだけなら面白い現象で済むが、これが困った問題を引き起こす。詳細に興味のある方は問い合わせていただきたい。
カテゴリー : 高分子
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