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2015.07/18 高純度SiCの技術開発(1)

高純度SiCの事業はゴム会社で現在も継続している。2億4千万円の先行投資を受けた30年以上前の出来事を今でも記憶している。その7年後起きた騒動で転職を決断したのは騒動を早く収集し事業を継続することが狙いだった。6年近くのいわゆる死の谷を歩き成功がみえてきたところだったたので苦渋の決断となった。しかしこの究極の選択が正しかったと今では思っている。

 

高純度SiC事業の重要な技術である、当時最先端の高分子前駆体を用いたセラミックスの高純度化法は、技術者として多くの技術経験を蓄積した成果である。但し、大学で3年以上の研究生活を行った社会人にあるような科学的に考えを思い巡らし発明に至った、あるいはアカデミックな研究を基盤にしてテーマを企画したというわけではない。

 

先行投資のきっかけとなる高純度SiC事業の企画については、訳あって無機材質研究所で実験を行うチャンスに恵まれ、それに成功した。その後、ゴム会社の会議室に一日缶詰状態となり、資料を企画としてまとめ、翌日社長の前でプレゼンテーションを行った。発明から先行投資が決まるまで、STAP細胞の騒動に似たびっくりするような日々の展開だった。

 

科学的ではない発明だったが、先行投資を受けてから一部のプロセスについて研究を行い学位論文としてまとめた。この学位論文については、発明を行っているときに、その構想も考えていた。ゴム会社の研究所は、アメリカのゴム会社を買収するまで、その作業ができる風土だった。また、会社の研究で学位を取られる方も多かった。定期的に海外留学も行われており、科学的研究能力を高めることに力を入れている企業の一つだった。無機材質研究所への留学も海外留学を指名されたときに自ら留学先を探して実現した。ゴム会社の研究所は研究の自由と人材育成という側面に関しては、優れた風土だったと思っている。

 

ところが、会社全体の風土はKKDを中心とした技術者魂があふれる会社だった。このアンバランスはゴム会社のイノベーションを生み出す風土になっていたように思う。研修で行われた成功体験の伝承は学会の受賞経験とKKDの融合の話題もあった。入社まで科学的方法論を学んできても、技術者魂をまさに入魂するような半年の研修で、自然とKKDの真の意味を理解するように成長する。

 

KKDは決して軽い経験やヤマ勘、それにくそ度胸という意味ではない。技術者の奥深い経験に裏打ちされた勘で思い切ったイノベーションを引き起こそうとする度胸のことである。科学で未解明の現象を機能として活用するときには、どうしても勘が必要になる。勘は体験で身につけた知識の展開であり必ずしも普遍の真理が保証されているわけではない。そのような勘を信じて実行できる度胸が新しい技術を生み出すのである。

 

 

 

カテゴリー : 一般

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