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2015.07/20 高純度SiCの技術開発(3)

高純度SiCの前駆体高分子をリアクティブブレンドで開発しようと考えた背景には、ポリウレタンRIMの成功体験が影響している。ポリウレタンRIMでは、SP値の差がある高分子でも均一にブレンドされたという。また、フローリー・ハギンズ理論のχパラメーターが正の場合に均一にブレンドできる唯一の方法と教えてもらった。

 

入社3年目に担当した高防火性フェノール樹脂発泡体技術開発では、フェノール樹脂発泡体の防火性をあげるために無機フィラーの添加が検討された。しかし、フェノール樹脂は脆性材料であり、そこへ無機フィラーを添加するとさらに脆くなる問題があり、防火性を改良しながら脆性も改善しなければいけないという二律背反の問題が生じた。

 

この問題解決において、ポリエチルシリケートの添加が検討された。この時は添加量が少なかったので反応バランスをとるのは容易にできた。そしてできあがったシリケート変性フェノール樹脂の脆性は改良されており防火性も高かった。この時分子レベルで均一になっていることが電子顕微鏡観察で証明されたが、超微粒子ではどうなるか、というある人のヤマ勘によるアイデアが出された。

 

今では超微粒子の靱性改善効果は公知の技術であるが、当時はまだ知られていなかった。超微粒子の安定な分散が難しかったからである。しかし、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂のブレンドからは容易に製造することができたので、超微粒子の補強効果を容易に確認することができた。ヤマ勘を働かせた人はこの点に着目していた。そして、ここまでできるとすぐにコストダウンの話になるのがゴム会社の常である。開発のゴールがどんどん高くなった。

 

シリケート変性のフェノール樹脂でも発泡体なのでコスト的には問題の無い技術だったが、タイヤ会社で安価に入手できるシリカゾルに変更すれば安くなることは誰でも理解できた。また、商品化まで時間は十分にあった。結局シリカゾルの分散技術を開発することになり、それに成功し、特許出願まで行った。

 

たった半年で高防火性フェノール樹脂天井材の技術を開発することができた。開発当初は難しい技術に思われたが、成功体験を共有したKKDによるポリエチルシリケートの検討からスタートしたのが良かった。研究開発において検討スキームが多岐にわたる場合にどこからスタートするかがその後の開発の成否を左右する場合がある。研究開発においても戦略が重要な理由である。

 

カテゴリー : 一般

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