2015.07/28 未だ科学は発展途上(7)
特公昭35-6616に書かれた酸化スズゾルは、ライバル企業の科学的に正しくない特許で非晶性と決めつけられた。実は注意深い実験を行うと、特公昭35-6616に書かれた合成法では、結晶性から非晶性まで様々な酸化スズゾルを合成できるので、この特許を証拠として、その後のライバル企業の特許のいくつかは公告になる前につぶせた。
もし当時老舗の写真会社に在職していたら、多くのライバル特許をそのまま成立させるようなことをしなかった。企業の技術者はいつもライバル会社の特許を監視しなければいけない。一方で科学論文も読まなければいけないので、アカデミアの研究者よりも忙しくなる。
ところが、会社で論文を読んでいると遊んでいるように思う不勉強な管理者もいるので、休日にこっそり読むことになる。技術者と言う職業は大変忙しい職業なのだ。また論文を読んでいる時間を労働時間に入れると日本における給与は安いということになる。
少し脱線したが、現代の科学の視点で特公昭35-6616を眺めると、ある合成条件で製造された結晶性酸化スズの導電性については、科学的に説明することが可能で、暗電流を測定すると公知の準位の導電性のレベルが確認され、分析結果からサポートされる酸素欠陥の存在を示すデータを科学的にうまく取得できる。
しかし合成条件を変えて結晶化度を下げてゆくと、次第に導電性が複雑に変化し、科学的に未解明の準位の導電性レベルが観察されるようになる。驚くべきことに1000Ωcm未満の導電性を示す非晶質の酸化スズゾルを合成可能で、この導電機構については未だ科学的に解明されていない現象である。
特許の都合でこれまで公開してこなかったが、すでに当方の書いた基本特許も切れているので秘密にしておく必要もなくなった。そこで、ある事実を公開する。すなわち、当時の私的な分析結果を示すと、合成条件により結晶化度が低下するとともに、酸化スズが構造水のようなものを持つようになる(実は酸化スズの構造水という表現は科学的に正しくない。正しくないがそのように思いたくなる面白い現象である)。すると導電性が出てくる。科学的に厳密な研究をやっていないが、この材料で導電性が最も良いものについて某大学の先生に評価をお願いした導電性の解析結果も存在し、非晶質酸化スズゾルが絶縁体ではなく導電体であることが20年以上前に証明されている。
しかしこれは内部文書なので公知の科学情報ではない。ゆえに非晶質の酸化スズゾルの物性については未だに科学的に解明されていないままである。さて科学的に未解明のことが多い状態では、どういうことが起きるか―――(明日に続く)
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