2015.10/12 技術者は環境技術を軽視してはいけない(2)
特に製品の機能が向上するわけでもなく、さらにコストダウンにつながらない技術を開発するのは一工夫も二工夫も必要である。また、重要視されていないような課題の場合には、担当者のモラールにも影響する。今の時代は、環境技術のテーマは立派な開発テーマになるが、20年以上前は、まだそのような時代ではなかった。
脱AをテーマにしてみたもののAは必須成分となる実験結果ばかり出た。A類似化合物で良い感触が得られても、変異原性の程度が下がるだけで陰性物質は見つからない。そもそも架橋剤は反応活性が無ければ機能しない。反応性がある物質は変異原性試験で陰性にならないので、テーマアップにより、その難しさを正しくとらえることができた。
このような問題では、同一技術のカテゴリーで考えていたならば堂々巡りになるだけであり、全く新しい技術コンセプトでチャレンジしなければ新しいアイデアなど生まれない。また、新しいアイデアを生み出したいならば、思い切って今持っている技術を捨て去る勇気が必要である。
そこで従来技術を捨て、新しいラテックスを2種組み合わせてポリマーアロイとする新概念の技術を検討したら、すぐに脱A技術が生まれた。このあたりの問題解決手順にご興味のある方は問い合わせていただきたいが、新しいアイデアのために既存技術を捨てる勇気は重要である。
フォルクスワーゲン社の不正プログラムの問題でも技術陣が従来技術を捨てる勇気があったなら、不正に手を染めることはなかっただろう。エンジン技術者でない当方の言葉では説得力がないかもしれないが、マツダのディーゼルエンジンに採用されているスカイアクティブ技術はそのようにして生まれている。
マツダのディーゼルエンジンは、従来のディーゼルエンジンの常識に反し、圧縮率を下げるように設計された。ご存じのようにディーゼルエンジンには点火装置が無いので、圧縮率を下げた設計というのは性能低下どころか動作しないエンジンになる可能性がある。しかしあえてマツダの技術陣は、環境に適合した新しい技術を生み出すために常識に反した領域にチャレンジし新技術を生み出したのだ。
カテゴリー : 一般
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