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2015.10/23 旭化成の子会社の不正

旭化成建材と親会社の旭化成は昨日の夕方、記者会見で過去11年間に旭化成建材が行った杭(くい)打ち工事は全国で3040件で、このうち41件に横浜のマンションの杭打ちを担当した現場代理人が関わっていたと発表した。
 
記者会見では不正が手の込んだものであり調査に時間がかかるとの見通しを述べたが、ニュースで報じられた限りでは41件以外についてどうするのか明言を避けていた。
 
これは推定になるが、今回の事件が起きた背景として杭打ち作業についてトラブルが発生した場合に、どのように対応すべきかの行動指針が明確でなかった可能性がある。すなわち、杭打ち作業のトラブルは必ず工事のやり直しを行う、という手順が徹底されておれば、発生しなかったと思う(注)。
 
さらにその工事のやり直しで工事期間が遅延するのは了解事項にしてあれば、今回の不正を防止できたものと思う。すなわち、杭打ちエラーは、初期段階で対応しなければ費用がかかるとの視点で、現場の行動指針を徹底するのである。
 
これが工期優先、コスト優先の行動指針になっていると、今回のような不正は再発する。事件が発生した時に性善説で運営されているというコメントがあったが、問題点のとらえ方が異なると思う。これは現場の作業手順書にエラー回避の配慮が不足していたのである。杭打ちデータを揃えておくことが単なる作業手順の一つとして簡単に処理されていたのではなかろうか。
 
その後に与える影響まで知識として作業者に知らされ、エラー回避する方向で作業手順が作成されておれば、問題は起きなかった。エラーがさらに大きなエラーの連鎖を生む可能性がある場合に、エラー回避に努めることが作業者のメリットになるよう作業手順が組まれておれば、作業者は必ずその手順に従い、うっかりミス以外を防ぐことが可能となる。
 
作業のエラーが重大な事態を招くような場合に、コストダウン重視の手順を徹底すると結果として大きな損失を招くものである。すなわち作業手順について冗長性やエラーが起きた時にそれを報告する行動が有利に働く手順にすることが大切なのである。
 
例えば車のリコールが多発していることがニュースになったりするが、これはリコールしなかった時のペナルティーが大きいので各社リコールするのである。このリコール制度があるにもかかわらず、三菱自動車はリコール隠しを昔行っていたが、これは明確な悪意として罰せられた。その後リコール隠しは再発していない。
 
(注)QC手法にFMEAという方法がある。これは作業工程や部品、材料までさかのぼりエラーが発生したときに製品にどのような影響が出るのかを予測する品質管理手法である。日本でQCを導入しているあるいはISO9001を取得している企業ならば皆実施しているはずである。杭打ち作業は、ニュースで報じられている状況からFMEAを行うとそこで発生するエラーの大半は重大エラーになるはずで、必ずエラー防止の対策を行うことになる。一流企業ならばこの手法を理解しているはずで「性善説で」という寝ぼけた発言は出ないはずだ。当然こうした手法の全社への導入は、経営者の責任となる。また、これは技術経営として重要なことだ。
  
 
 
 

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