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2015.12/16 科学の進歩

20世紀に科学は著しく進歩し、ついに人類は生命誕生に関わる科学まで扱いだした。20世紀末には哲学者から提案があり、倫理に基づく一定の線引きがなされ、iPS細胞の発明までたどり着いた。
 
ところが面白いのはこの発明のプロセスがものすごく非科学的であったことだ。先端の科学では、未解明の真理が少ないので、仮説に基づく実験が繰り返され、仮説の正しさが立証されると新たな真実が誕生する、というゆるやかな歩みで進歩する。
 
しかしヤマナカファクター誕生は、実験のきっかけこそ仮説が存在したが、その発見のプロセスは学生の大胆な実験結果が運良くヒントをもたらし、そこから消去法という科学の禁じ手を使用し4つの遺伝子を見つけ、この分野に急速な進歩をもたらした。
 
山中先生がノーベル賞を受賞されたときに、研究はこれからだ、と言われたのは恐らく本心からであり、非科学的方法で技術が見つかっただけの段階と認識していたからだ。
 
このように科学の進歩には、科学的に美しく行われるプロセス以外に、泥臭く、あっと驚くタメゴロー式のプロセスにより急速な進歩が引き起こされる場合もある。ところが、科学的プロセスを学校で学ぶ機会が多いためか、マスコミで技術を取り上げるときには、あたかもこれが科学のすべてであるかのような取り上げかたをする。
 
その結果、このプロセスが極めてポピュラーになり、科学の進歩を引き起こす方法として、この方法が正統派だと誤解している人が多い。ところが、むしろ非科学的プロセスにより急速な進歩となった事例が歴史的には多く、非科学的方法こそ効率的にイノベーションを引き起こす手段として注目すべきと考えている。
 
当方は、科学的に美しく行われるプロセスは優等生ならば誰にでもできるという理由で、タメゴロー式のプロセスを好んで使用してきた。これは大学院時代に指導を受けた恩師の影響が大きい。学部時代は、いかにもアカデミアと呼べる教育を受けてきたので大学院で研究室を異動し指導者が替わったときに多少面食らった。
 
まず、恩師とうまくコミュニケーションがとれないのである。このとき科学という学問の本質である論理の厳密性が重要であることと、それがアイデアの可能性と広がりに制限を加えていることに気がついた。
 
この時指導してくださった先生は、読むべき論文をこっそりと用意してくださっているような親切な先生だった。しかし、時々議論で発展した発想の方向へ論理がぶっ飛ぶので話について行くのが大変であった。
 
大学院時代は苦労した2年間であったが、技術者として就職し実務を初めて見ると、この時の「ぶっ飛び」感覚が技術開発でイノベーションを起こすために重要であることに気がついた。そしてタメゴロー式プロセスを好んで使用するようになった。但し学位は高純度SiCの反応速度論を科学的に美しくまとめている。
 
科学を重視した非科学的方法こそ現代のイノベーションを起こす方法として注目すべきと考えている。興味のある方はお問い合わせください。
 

カテゴリー : 一般

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