2015.12/19 非科学的な問題解決法
世の中の現象を科学ですべて理解できる、と勘違いしている人がいる。また、ロジカルなビジネスプロセスの問題解決法が流行し、コンサルティングも多数行われているので、ロジカルな問題解決法がすべて、と思っている人も多い。
科学の大系はロジカルに構築されているが、科学の世界でいつも真が保証されるのは、科学的に正しいと認められた結果を論理的にに結合したときだけであることに気がついていない。換言すれば、科学的に不明確な仮説を論理の中に取り込んだ瞬間に、そこから導かれる結果は、いつも真とは限らないのだ。
時にはヒューリスティック(経験的判断)による解決法が正しいときがある。かつて過去の成功体験をそのまま使用してうまく行かないのは当たり前で、科学的に問題解決せよ、と科学以外をすべて排除した時代がある。しかし、科学的な問題解決法では解決困難あるいは時間がかかる体験が繰り返され、過去の経験知(実践知)をまず試してみる風潮も出てきた。
ヒューリスティックな方法には、形式知にできない実践知と暗黙知が含まれている。異なる事象に適用されて、成功体験が蓄積されると、ヒューマンプロセスから新たな形式知を生み出す場合もあるので、過去の成功体験をまず試してみる、という姿勢は重要である。ただ、その試し方が問題となる。実践知や暗黙知を使い、問題解決法として利用するためにはそれなりの方法がある。科学的方法と同様に用いると大きな失敗につながる場合もあるので弊社に相談してほしい。
例えば、高分子の未溶融物の問題では科学的に解明されていない部分が多い。しかし、当業者ならばそれがどのような形態であるのか、またどのような不具合を引き起こすのか知っている。ただし、その解決法となると様々である。
樹脂を高温度で溶融するだけで解決する場合もあるし、特定の混練機で混練すれば問題解決する場合もある。温度の問題だけであれば、おそらく単純な試行錯誤で気がつくだろうが、混練機あるいは混練方法の問題になってくると大変である。混練技術そのものが科学的に解明されていないからだ。
ところが混練装置のエンジニアリングについては一応の科学的な大系ができており、教科書も存在する。しかし、それが高分子に適用され、高分子がどのように変性されてゆくのかについては、未だに科学で解明されていない分野である。このことが分かっている人は少ない。
科学的に取り組んで解決できない状態になっても、教科書に頼ろうとする。そして、最後は訳のわからないまま否定証明となる。あるいは、土壇場で実践知を持ち出し、もぐらたたきを始めたりする。それも、穴から顔を出していないモグラを叩き続けるという状態になる。実践知には、うまく活用するコツがある。
抽象的な表現をすると、実践知や暗黙知を用いてモグラたたきを行う場合は、まずモグラを捕まえて縛ってから叩くのがコツである。一発でしとめられる。極めて低率だったPPS中間転写ベルトの歩留まり改善問題もこのように解決した。但し叩く道具が悪ければ、捕まえているモグラに笑われるだけだ。
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