2015.12/25 高分子の混練
今年もまもなく紅白歌合戦を視聴することになる年の瀬である。何とか会社は5周年を迎えようとしている。今年はなぜか高分子の混練に関する質問が多かった。ゆえに来年1月末に混練の講演を&Techの主催で行うことにした。
高分子の混練は、形式知だけではどうにもならない分野である。しかし、「形式知でどうにもならない」ということを理解している人が少ないので指導するときに大変苦労する。2005年には、コンパウンドを購入していた某メーカーの技術サービスから「素人はだまっとれ」と言われた。仕方が無いので、黙ってコンパウンド工場を短期間で立ち上げ、コンパウンドを内製することにした。
この時の生産ラインでは世界で初めてカオス混合の連続装置が無事稼働した。手作りに近い装置だったが、未だにトラブルが無いので、この装置とコンセプトは異なるが動作がよく似ている、4年間開発を続けてきた新しいタイプを弊社から販売することにした。
高分子の混練の実践知は、ゴム会社で新入社員の研修と3ケ月間ではあるが電卓でマクスウェルモデルの計算を行っていた大変優秀な指導社員から教えていただいた。理論派であったが、混練の形式知は当てにならない、と明確に否定し、実践知を科学的に観察を中心にご指導してくださった。
残業代も無く、深夜まで業務を行うという、今ならばブラック企業と呼ばれるような指導環境ではあったが、ゴム配合の考え方やロール混練の暗黙知に至るまで丁寧にご指導いただいた。濃厚な教育環境は、今から振り返るとバラ色に輝いており、ロールで混練されていたゴムだけがブラックだった。
高分子の混練だけは、現場の指導がどうしても必要と感じている。言葉で技術がどこまで伝わるのか、当方はあまり自信は無い。講演会でもそのようにお話しする予定である。40年近く前の指導社員も同様の発言をしていたが、実践知や暗黙知の伝承の難しさだろう。
ちなみに指導社員は、一連のゴム開発プロセスを説明後、ご自分が加硫したゴムサンプルをくださり、このサンプルと同じ物性のゴムができるようになったら、次のステップに進みます、と言われた。そのゴールを達成するのに1週間ほどかかったが、よく短期間で達成できたね、と褒めてくださった。この時は1週間会社に泊まりながら混練の練習をしていた。
複雑な配合処方になるとプロセシングの影響がその物性に大きく現れるようになる。単純な配合であったPPSとナイロン、カーボンの三成分系でさえ、混練条件でその電気電子物性は大きく変動し、カオス混合を用いなければ到達しない世界が存在した。カオス混合技術は、新入社員時代のロール混錬の技術から生まれた成果であるが、関心のある方はお問い合わせください。